研究課題/領域番号 |
17K14415
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
荒砂 茜 金沢大学, 先端科学・イノベーション推進機構, 博士研究員 (40794681)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MgSiO3 / 星間塵 / 彗星核 / シリカ / 水分子 / OH基 |
研究実績の概要 |
平成29年度は星間塵のモデル物質となり得る非晶質MgSiO3の衝撃挙動を明らかにするため、以下の2つのサブテーマの研究を実施した。 (1) 含水率を6.2wt%とした非晶質MgSiO3を合成し、15.8および19.4GPaで衝撃圧縮実験を実施した。衝撃圧縮実験は熊本大学のパルスパワー科学研究所の川合信明博士のもとで行った。圧縮前の試料は非晶質構造を持ち、水分子とOH基をあわせて6.2wt%ほど含む。粉末状の合成試料を衝撃圧縮カプセルに厚さ2mmになるように封入して衝撃圧縮実験を実施した。未衝撃および衝撃圧縮実験後の試料には粉末X線回折測定、赤外分光法測定、示差熱-熱重量測定などを実施し、衝撃圧縮による試料の構造変化を解明した。この結果、試料は15.8GPaの圧力で結晶化しており、その粉末X線回折パターンから大部分がMgSiO3の結晶相に結晶化したことが明らかとなった。他のシリケイト鉱物の衝撃圧縮の先行研究では非晶質から結晶相への構造変化は見られず、本研究で見られた構造変化は非常に特異的と言える。 (2) (1)の衝撃圧縮実験で発生する熱の影響を考慮するため、(1)で使用した含水率6.2wt%の非晶質MgSiO3について電気炉を用いた600-1000度までの加熱実験を実施した。試料は800度1時間の加熱で結晶化しており、そのX線回折パターンと赤外スペクトルは15.8GPaで衝撃圧縮した試料のものに一致した。 なお、研究費の大部分は試料の合成に関する備品や薬品の購入、成果発表に関する旅費に使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は本研究課題の核となる含水の非晶質MgSiO3の合成と衝撃圧縮実験を実施、その圧縮による構造変化を解明できており、研究はおおむね計画通り進展している。非晶質MgSiO3試料を合成するための技術を既に獲得しているため、衝撃圧縮実験の他に、その議論を補うために必要と考えられる加熱実験も実施できた。 衝撃圧縮実験の成果については計画どおり順調に得られたほか、衝撃圧縮実験の議論をさらにハイレベルにするための加熱実験も実施できており、衝撃圧縮実験の議論では必須となる熱の影響についても早い段階から議論を開始できた。また、本研究の予備的な実験として既に実施済みであった14.9wt%の含水率をもつ非晶質MgSiO3の衝撃圧縮実験の成果も含めて、今年度の成果について平成30年2月に行われた宇宙航空研究開発機構の宇宙科学に関する室内実験シンポジウムにて招待講演として発表した。また、平成29年度に得られた成果については国際学術誌に発表するために原稿を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も平成29年度に引き続き非晶質MgSiO3試料を合成し、衝撃圧縮実験を実施することで、本研究をさらに推進させる予定である。含水率をコントロールした試料の安定的な合成については、すでにその合成技術を習得しているため問題なく実施できる。さらに衝撃圧縮実験については、本実験の共同研究先である熊本大学の川合信明博士とすでに平成30年度の実験計画について調整を行っており、実験実施には何の問題もない。また、平成30年度後半からはMgSiO3に加え、彗星核のシリケイトの主要構成鉱物の一つであるオリビン(Mg2SiO4)の合成も行う予定で、その衝撃圧縮実験についても計画している。
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