研究課題/領域番号 |
17K14416
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋澤 紀克 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (40750013)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 硫化鉱物 / FIB / TEM-EDS / マントル捕獲岩 / 炭素 / sub-micrometerスケール |
研究実績の概要 |
sub-micrometerスケールの鉱物解析手法のかんらん岩捕獲岩への適応を推進した.高倍率の対物レンズ(100倍)を用いた偏光顕微鏡で確認されていた列状の丸い硫化鉱物(直径1 micrometer)を対象に,集光イオンビーム(FIB)で鉱物を切り出して薄片を作成し,電子顕微鏡ーエネルギー分散型X線分光器(TEM-EDS)を用いたsub-micrometerスケール鉱物解析と元素分析を適用した.その結果,その硫化鉱物は,nano-meterスケールで複雑に鉱物相分離を被っていることを明らかにした.また,硫化鉱物の白金族元素(PGE)含有量をTEM-EDSを用いて定量化することに成功した.これは,マントル中でのPGE含有量定量に向けて大きな進展であったと言える. 一方で,そのかんらん岩捕獲岩サンプルの鉱物主要・微量元素組成分析を詳細に行う(EPMA,La-ICP-MSを使用)ことで,その列状の硫化鉱物の形成過程を明らかにする作業を行った.特に重要であったのは,その硫化鉱物形成の際に炭素を含むメルトによる交代作用を被っていることを明らかにした点である.これは,上記硫化鉱物の周りが炭素質ガラスで覆われていることと調和的であり,sub-micrometerスケール鉱物解析の有用性を強く示唆している.以上の結果は,マントル中のPGEが炭素を含むメルトにより動くということを示唆しており,マントル中でのPGEの挙動解明に繋がることが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度行ったsub-micrometerスケールの鉱物解析をマントル捕獲岩に適応することができたため,研究進展はおおむね順調に進んでいると言える.鉱物解析のスケールが極端に小さいため,実験の大幅な進展は難しいと考えられたが,試行錯誤(主に,FIBを用いた鉱物の薄化作業の成功による)を重ねることで実験成功に至った.また,その成果を国際論文として発表することができたため,今後の本研究継続的進展に大きく寄与することができたことも特筆すべき点である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに解析ができているのは1サンプルのみである.マントル捕獲岩中のsub-micrometerスケールの鉱物解析手法の確立は行うことができたので,今後は解析するサンプルの数を増やしていかなければならない.また,Os同位体分析がまだ実施できていないので,その実施を早急に行っていく必要がある.
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