研究課題
地球中心核は固体金属でできた内核と、それを覆う液体金属でできた外核から構成されており、その主成分は鉄(Fe)である。地球核の圧力温度はそれぞれ136GPa以上、4000K以上と、超高圧高温の世界となっている。地球核の化学組成は、地球の材料物質、マグマオーシャンから金属核が分離した核形成時の状況、及びマントル対流・コアダイナモといった現在のダイナミクスを理解するために欠かすことができない情報である。地球中心核の情報は、地球内部を伝搬する地震波によって得られる音波速度や密度といった物性値に限られている。よって、地球核に相当する高圧高温下で候補となる鉄合金の物性測定を行い、地震波観測と比較することが核の化学組成解明の唯一の手段となる。しかしながら、実験の困難さから、これまでに静的圧縮下で液体鉄合金の物性を測定した例はたかだか10GPa程度に限られていた。本研究では、地球中心核の主成分であるFe、さらに副成分の候補である炭素(C)やリン(P)との合金を高圧下で融解させその縦波速度を測定し、地球核中の炭素とリンの含有量を決定することを目的とした。測定には大型放射光SPring-8に設置されている非弾性X線散乱分光装置とレーザー加熱式ダイヤモンドアンビル高圧高温発生装置を用いた。今年度は、特に液体Fe、液体Fe-P合金の音速測定実験を行い、それぞれ45GPa、54GPaまで縦波速度を測定することに成功した。両者の縦波速度を比較すると、ほとんど差異がなく、本測定圧力領域においてリンは液体Feの音速に影響を及ぼさないことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、液体Fe合金の縦波速度を最大70GPa までの圧力で決定すること目的としている。H29年度は液体Fe、液体Fe-Pの音速測定を45GPa、54GPaの圧力までそれぞれ測定することに既に成功しており、それぞれの縦波速度の圧力依存性も決定できており、研究計画当初の目的をほぼ達成している。
H30年度は、縦波速度の圧力依存性の決定精度を高めるため、これまで成功させている液体Fe及びFe-Pの測定圧力を当初の目標である70GPaまで拡張する予定である。
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