中国東北部五大連池市周辺で採取したアルカリ玄武岩試料のうち,非常に発泡度の高い試料から分離したかんらん石斑晶に含まれるメルト包有物の揮発性成分(水,二酸化炭素,ハロゲン,硫黄)の濃度測定を,海洋研究開発機構高知コア研究所設置のSIMSを用いて行った.ほとんどの試料が水,二酸化炭素に関しては脱ガスを経験しているものの,フッ素や塩素に関しては,初生的な含有量を保持していた.分析結果を用いて,初生メルト中の揮発性成分濃度を推定し,そこから更に起源マントル中の揮発性成分濃度を推定したところ,マントル中には中央海嶺下の標準的なマントルに比べて10倍近くの高濃度でフッ素,塩素を含んでいることを新たに明らかにした.この結果は,12月に開催された米国物理学連合秋季大会で発表し,近々にも学術論文として投稿予定である. 横田火山群玄武岩溶岩(約2-1 Ma)と黒岩高原玄武岩溶岩(約5 Ma)試料について,EPMAを用いた斑晶化学組成分析を新たに行った.その結果を用いてそれぞれのマグマ含水量を推定したところ,横田玄武岩は約4 wt%,黒岩高原玄武岩は約2 wt%という結果になり,従来の研究から言われていた,中国地方では一様に2wt%以下と低い値を示すという結果とは異なる結果が得られた. 神鍋火山の南に位置する大屋火山の玄武岩質溶岩試料(約2.4 Ma),丹後半島に分布するピクライト質玄武岩質溶岩試料(約18-21 Ma)の採取を新たに行い,それらの試料について,岩石記載,全岩化学組成分析,および斑晶化学組成分析を行った.大屋溶岩は総じて新鮮で,神鍋火山周辺の第四紀火山の中では最も未分化な組成を有することも新たにわかった.丹後半島ピクライト質玄武岩は,先行研究の報告通り,やや変質しているが,斑晶は変質を免れているものも多く,マグマ含水量,マグマ生成条件の推定を今後行うには適した試料が採取できた.
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