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2018 年度 実施状況報告書

タイタンのミッシングメタンリザーバを解明するメタンハイドレート研究:拡散と粒成長

研究課題

研究課題/領域番号 17K14422
研究機関徳島大学

研究代表者

野口 直樹  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (50621760)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードメタンハイドレート / 拡散 / タイタン / 高圧 / 分子ダイナミクス / 赤外分光法
研究実績の概要

まず、平成29年度に立ち上げたメタンハイドレート(MH)合成用の低温高圧リアクターの改造を行った。水―高圧ガス接触法で、効率よくMHの合成するために、リアクター内の水とメタンガスの界面を、磁石を使って攪拌できるようにした。これによって、以前に比べて未反応の氷の含有率が小さくなり、純度の高いMHを合成できるようになった。
合成したMHとダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使って低温高圧条件での赤外分光測定を行った。これまで常圧に近い条件でのMHの赤外吸収スペクトルは測定されていたが(Dartois and Deboffle, 2008)、この実験によって8~300 K, ~8 GPaまでの温度圧力条件での赤外吸収スペクトルが初めて得られた。これにより、分子拡散の素過程であるメタンの分子回転の振動数は圧力とともに上昇していくことが分かった。また、MHの高圧相のスペクトルについては、II相とII’相ではメタンの吸収バンドの形状が大きく違うことが分かった。II相とII’相ではX線回折パターンがほとんど変化しないことが分かっており、II相とII’相はケージの構造は同じで、ケージ中のメタン占有率が異なると考えられる。これは過去のラマン分光法によるMHの研究結果(Shimizu et al., 2002)と整合的である。現在、この成果に関する論文を執筆中である。
上記のように赤外分光法によるMHの分子ダイナミクスの基礎的研究を進める傍ら、MHの拡散の予備的研究として、H2Oの高圧相VIの水素同位体の拡散実験を行った。過去の高圧氷VII相の自己拡散の研究(Katoh et al., 2002)で開発された、DACと赤外分光法を用いる方法で行った。結果、求まる水素拡散係数は、ラマン分光法で求まる値(Noguchi and Okuchi, Under review)と概ね一致した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当該年度はMHの拡散実験に注力したおかげで、実験に使う装置を立ち上げることができ、実験手法を確立することができた。拡散実験を実施するための道筋はついたと言える。また、その過程で、高圧赤外分光測定によってMH中のメタンの分子ダイナミクスの知見が得られたことはひとつの成果であった。しかしながら、本課題のもうひとつの柱であるMH多結晶体の粒成長実験には手が回らなかった。このため、最終目標であるタイタン内部のMHの埋蔵量の推定との大気中へのメタンフラックスを推定はまだできていない。

今後の研究の推進方策

MH多結晶体の粒成長実験にも着手するために、出発物質となる細粒なMH多結晶体の合成も試みる。DACとX線回折法を使ってMH多結晶体の粒成長その場観察実験を実施する。そして、粒成長速度の温度圧力依存性を調べ、粒成長の活性化エネルギーと活性化体積を決定する。これと並行して、DACと赤外分光法を用いる方法でMH中のメタンの自己拡散実験も実施する。拡散係数の温度圧力依存性を調べ、拡散の活性化エネルギーと活性化体積を決定する。拡散実験と粒成長実験は、タイタンの中心に相当する圧力6 GPaまでの範囲で実施する。MHは6 GPaまでの圧力範囲で3種類の多形があることが分かっており、それぞれの相について拡散と粒成長のデータを取得する。それらの拡散・粒成長実験の結果に基づき、タイタン内部にあるMH層の平均厚みと、そのMH層から大気中へのメタンフラックスを推定する。

次年度使用額が生じた理由

この次年度使用額は、予算使用にあたっての端数である。消耗品の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Pluto's ocean is capped and insulated by gas hydrates2019

    • 著者名/発表者名
      Shunichi Kamata, Francis Nimmo, Yasuhito Sekine, Kiyoshi Kuramoto, Naoki Noguchi, Jun Kimura, Atsushi Tani
    • 雑誌名

      Nature Geoscience

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] High-pressure synthesis of doped black phosphrous2019

    • 著者名/発表者名
      Naoki Noguchi, Yuki Fujii, Takahiro Saitoh and Hidekazu Okamura
    • 学会等名
      MISASA 2019 & CMC "Origin, Evolution & Dynamics of the Earth & Planetary Interior"
    • 国際学会
  • [学会発表] 低温高圧下におけるメタンハイドレートの赤外分光測定2018

    • 著者名/発表者名
      野口 直樹, 米澤 拓也, 横井 優, 徳永 友貴, 森脇 太郎, 池本 夕佳, 岡村 英一
    • 学会等名
      第29回光物性研究会論文集
  • [学会発表] メタンハイドレートの低温高圧下での赤外分光測定2018

    • 著者名/発表者名
      野口 直樹, 米澤 拓也, 横井 優, 徳永 友貴, 森脇 太郎, 池本 夕佳, 岡村 英一
    • 学会等名
      第58回高圧討論会
  • [学会発表] 高圧下における高圧氷VI相の水素拡散係数の測定2018

    • 著者名/発表者名
      米澤 拓也, 野口 直樹, 岡村 英一
    • 学会等名
      第58回高圧討論会

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公開日: 2019-12-27  

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