研究実績の概要 |
まず、平成29年度に立ち上げたメタンハイドレート(MH)合成用の低温高圧リアクターの改造を行った。水―高圧ガス接触法で、効率よくMHの合成するために、リアクター内の水とメタンガスの界面を、磁石を使って攪拌できるようにした。これによって、以前に比べて未反応の氷の含有率が小さくなり、純度の高いMHを合成できるようになった。 合成したMHとダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使って低温高圧条件での赤外分光測定を行った。これまで常圧に近い条件でのMHの赤外吸収スペクトルは測定されていたが(Dartois and Deboffle, 2008)、この実験によって8~300 K, ~8 GPaまでの温度圧力条件での赤外吸収スペクトルが初めて得られた。これにより、分子拡散の素過程であるメタンの分子回転の振動数は圧力とともに上昇していくことが分かった。また、MHの高圧相のスペクトルについては、II相とII’相ではメタンの吸収バンドの形状が大きく違うことが分かった。II相とII’相ではX線回折パターンがほとんど変化しないことが分かっており、II相とII’相はケージの構造は同じで、ケージ中のメタン占有率が異なると考えられる。これは過去のラマン分光法によるMHの研究結果(Shimizu et al., 2002)と整合的である。現在、この成果に関する論文を執筆中である。 上記のように赤外分光法によるMHの分子ダイナミクスの基礎的研究を進める傍ら、MHの拡散の予備的研究として、H2Oの高圧相VIの水素同位体の拡散実験を行った。過去の高圧氷VII相の自己拡散の研究(Katoh et al., 2002)で開発された、DACと赤外分光法を用いる方法で行った。結果、求まる水素拡散係数は、ラマン分光法で求まる値(Noguchi and Okuchi, Under review)と概ね一致した。
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