研究課題/領域番号 |
17K14423
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
横山 立憲 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (10750846)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射年代学 / マルチアイソトープ / 元素分別過程 / コンドライト |
研究実績の概要 |
本研究では、惑星物質に認められる「アルカリ元素に富む惑星物質」に着目し、マルチアイソトープ年代学研究から原始太陽系星雲中で起きた元素分別過程へ制約を与えることを目的としている。 平成29年度は、Baスタンダードの繰り返し分析による分析精度の評価及び隕石試料数 mgに含有される微少量なBa([Ba]<50ng)の同位体分析手法の確立を行った。試験試料として3種のコンドライト全岩試料(それぞれ約15 mg相当分)及び難揮発性元素に富むAllende中のバードオリビンコンドリュール4試料(0.5-5 mg)のBa同位体分析を実施した。元素を単離する化学分離操作には、陽イオン交換樹脂、溶媒抽出樹脂及び溶媒抽出樹脂に含まれる有機物の除去のために吸着剤を用いた。同位体分析には国立科学博物館のマルチコレクタ表面電離型質量分析装置を使用した。Baスタンダードの分析結果から、本手法によるBa同位体の各分析の不確かさは135Ba/136Ba比、137Ba/136Ba比、138Ba/136Ba比で、それぞれ75 ppm, 10 ppm, 15 ppm (2SE:Standard Error)以下であった。また、3回の繰り返し分析により得られたスタンダードのBa同位体組成は、135Ba/136Ba=0.8393027±34、137Ba/136Ba=1.429119±32、138Ba/136Ba=9.13001±14(2SD:Standard Deviation)であった。以上の結果から、高精度なBa同位体分析手法が確立されたと判断できる。 今後はCs, Baの定量分析手法を構築するとともに135Cs-135Ba、87Rb-87Sr、40K-40Ca同位体系での年代測定を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Baの同位体分析手法の確立については、当初計画よりも順調に進行している。一方で、アルカリに富む惑星物質の調達及び同定については、当初計画よりやや遅れている。本研究で用いる惑星物質試料については、一部は入手済みであるが、入手できていないものは国内外の関連研究施設を通して入手する予定である。以上より、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はICP質量分析法によるCs, Baの定量手法を確立し、アルカリに富む惑星物質について分析を進める。87Rb-87Sr、40K-40Ca同位体系による年代測定では、元素の定量において同位体希釈法を採用する。本手法に必要な濃縮同位体は所持している量が不足してきているため、購入して調製を行う必要があるが、40Kの濃縮同位体など一部入手が困難なものもある。入手可能な濃縮同位体については適宜調製し、逆定量分析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の見通しが比較的明確な項目を優先し、当初平成30年度以降に実施予定としていた分析から着手したため、平成29年度に購入予定としていた試薬及び分析消耗品の一部について、調達に遅れが生じた。「次年度使用額」は、当初平成29年度に購入予定としていた物品の購入に充てる。
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