研究実績の概要 |
本研究では、惑星物質に認められる「アルカリ元素に富む惑星物質」に着目し、その同位体年代学研究から原始太陽系星雲中で起きた元素分別過程へ制約を与えることを目的として進めた。長半減期核種を親核種とする87Rb-87Sr, 40K-40Ca同位体系による年代測定に加え、消滅核種135Csを親核種とする135Cs-135Ba同位体系を用いた高時間分解なマルチアイソトープの年代学研究を進めた。 令和4年度は、同位体希釈法によるK及びCa濃度の定量に必要な濃縮同位体の調製を再開した。また、研究協力を求め、Ca同位体の分析に優位な熊本大学の表面電離型質量分析装置でも分析が実施できるように、技術整備を進めた。また、Cs-Ba年代測定については、実試料の測定のための標準試薬の分析、実試料を模したコンドライト隕石(全岩)及びコンドリュールのBa同位体分析を国立科学博物館で実施し、繰り返し精度の確認とコンドリティックかつ微小な試料に対するBa同位体測定精度を確保した。一方で、コンドライト全岩試料やコンドリュール試料の分析から、Ba同位体の組成にK-CaやRb-Sr年代測定時に添加したスパイクの影響が確認された。これはスパイク中に含まれる微量なBaの影響と考察された。 現時点で取得したアルカリ元素に富む岩片を含むYamato-74442及びBhola隕石の全岩Ba同位体組成、及びアルカリ元素に富む岩片のBa同位体組成から、Cs-Ba年代を取得するには、スパイクを添加していない試料を新たに準備し、再測定する必要があると考えられる。 令和2年度、令和3年度に引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大から外部協力機関への出張が十分に行えず、スパイクを添加していない実試料(アルカリ元素に富む岩片)の前処理や分析は本補助事業期間に十分に実施することができなかった。
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