研究実績の概要 |
本研究は,九州大学の遷移プラズマ発生装置(HYPER-II)を用いてイオンが非磁化状態にあるプラズマの中間相(遷移プラズマ)の流れの発生機構を速度空間の階層から明らかにすることを目的とした研究である.本年度は前年度に開発した高精度レーザー誘起蛍光(LIF)ドップラー分光システムおよび真空導入型LIF受光計を用いてHYPER-II装置内の大域的な速度分布関数計測を実施した.特に, 従来の研究では殆ど計測されていなかった軸方向の中性粒子流れの詳細計測を行い, 磁力線方向の中性粒子輸送がプラズマの構造形成に重要な役割を果たすことを実験的に示し, 輸送の特性がプラズマの条件によって質的に変化することなどを明らかにした. 中でも, 中性粒子の軸方向逆転流構造の発見は, 部分電離プラズマ研究において重要な意味を持ち, プラズマ中の中性粒子の流れ構造がプラズマの輸送と密接に関わって形成されていることを実験的に実証することが出来た. 本課題で提案した速度空間の階層からプラズマの構造形成や輸送現象を明らかにする実験的運動論的アプローチの有用性を示すことが出来, プラズマ科学の発展に貢献する研究が行えたと総括できる. 計測システム開発や遷移プラズマ領域の大域計測に関する結果はアメリカ物理学会・プラズマ分科会やプラズマ・核融合学会, 日本物理学会など国内外の学会で積極的に報告した.特に,申請者と協力して実験を行った九州大学の安部 (修士2年) が発表を行った逆転流の発見および中性粒子輸送に関する結果はプラズマ・核融合学会 (2019, 大阪) の若手学会発表賞およびプラズマ科学のフロンティア研究会2019 (核融合科学研究所) の若手ポスター発表賞を受賞しており, 研究の重要性を認められるとともに研究を通して大学院教育に貢献したと言える.
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