研究課題/領域番号 |
17K14426
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
大石 鉄太郎 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80442523)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 不純物輸送 / タングステン / 真空紫外分光 / ITER / 周辺プラズマ |
研究実績の概要 |
核融合プラズマの対向材として金属タングステンを用いる場合,周辺プラズマにおけるタングステン不純物イオンのフローは,プラズマ中にタングステンが蓄積するかどうかといった不純物輸送挙動に大きく影響する.本研究課題では,磁場閉じ込めプラズマの周辺部統計的磁場におけるタングステンイオンのフロー計測を目指す.実験は核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDで行う.炭素樹脂内に微量のタングステン金属片を封入したペレットをプラズマに入射し,LHDプラズマ周辺部の統計的磁場領域を総称するエルゴディック層において発光するタングステンイオンの線放射スペクトルを,真空紫外分光システムを用いて観測する. 本年度は極端紫外分光及び可視分光も併用し,タングステンイオンの多価数同時計測及び空間分布計測データの取得に成功した.タングステン入射後に電子サイクロトロン共鳴加熱を印加した場合にタングステンイオンの空間分布が変化する様子が観測された.これは背景プラズマのパラメータと不純物輸送との相関を議論する上で基礎データとなりうるものである. また,エルゴディック層における不純物遮蔽効果の機構解明を目指し,エルゴディック層内の炭素イオン温度分布を真空紫外分光システムを用いて観測した.磁力線結合長と相関のある炭素イオン温度分布が観測され,磁力線平行方向の運動量バランスによって不純物輸送を記述する理論モデルを用いた数値計算とも良い一致を示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温プラズマへのタングステン不純物導入,プラズマが放射崩壊せず放電を保持することができるパラメータ領域の確定,真空紫外分光・極端紫外分光・可視分光によるタングステンイオン発光の計測と,研究の各段階において当初期待していたとおり成果が出ているため,おおむね順調に進展していると評価できる.
|
今後の研究の推進方策 |
LHD周辺部のエルゴディック層では,統計的磁場構造が不純物遮蔽効果を大きく促進することが炭素や鉄といった既存の不純物について実験を通して確認されている.LHDではプラズマの大半径を増加させると周辺部磁場の統計性が増す.統計的磁場もしくはコロモゴロフ長を実験パラメータとし,不純物遮蔽効果がタングステンに対して更に有効に機能するかどうかを検証し,タングステン蓄積抑制への手掛かりを得る.溶発の径方向位置を制御して特定のエルゴディック層径方向位置にタングステン源を分布させることにより,主プラズマへのタングステンイオンの流入の遮蔽具合を各種真空紫外・極端紫外分光装置を用いて計測する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初の予定よりも現有設備を有効活用できたため,物品費支出が少なくなり次年度使用額が生じた. (使用計画)スペクトルをより明るく観測するために光学系を最適化し,検出効率の向上を図る.反射型回折格子などの光学機器購入,ケーブル,コネクタ他電子部品,ガスケット他真空部品を物品費をして計上している.研究成果は国際学会および国内学会で発表し,論文化する.
|