研究課題
核融合プラズマの対向材として金属タングステンを用いる場合,炉心プラズマへのタングステン不純物蓄積を抑制するために,不純物輸送の制御手法を確立する必要がある.本研究課題では,磁場閉じ込めプラズマの周辺部統計的磁場において発現する不純物遮蔽現象が,タングステンイオンに対しても効果的に作用する条件の探索を目的とする.実験は核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDで行う.炭素樹脂内に微量のタングステン金属片を封入したペレットをプラズマに入射し,LHDプラズマ周辺部の統計的磁場領域を総称するエルゴディック層において発光するタングステンイオンの線放射スペクトルを,真空紫外分光及び極端紫外分光を用いて観測する.本年度はプラズマの加熱パターンを工夫し,主にエルゴディック層に分布する低価数タングステンイオンからの発光を明確に観測できる条件の確立に成功した.タングステンイオンの多価数同時計測及び空間分布計測データも取得できており,これらは背景プラズマのパラメータと不純物輸送との相関を議論する上で基礎データとなりうるものである.また,エルゴディック層における不純物遮蔽効果の機構解明を目指し,炭素不純物イオンに関する分光計測の観測結果と,磁力線平行方向の運動量バランスによって不純物輸送を記述する理論モデルを用いた数値計算との比較を進めた.高価数イオンからの発光と低価数イオンからの発光との強度比を不純物遮蔽効果の指標とし,背景プラズマが軽水素である場合と重水素である場合を比較したところ,重水素プラズマにおいて遮蔽効果がより顕著となることがわかった.不純物遮蔽現象の基礎物理となる不純物イオンの磁力線並行方向フローが背景プラズマのイオン質量に対して依存性を持つ様子も観測され,数値計算でも定性的に再現できた.
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 1289 ページ: 012037~012037
10.1088/1742-6596/1289/1/012037