本研究では、光捕捉(光トラッピング)によりタンパク質アミロイドの集合体形成を時空間制御し、顕微蛍光分光を用いてその形成過程を明らかにすることを目的とした。ニワトリ卵白リゾチームを光捕捉対象とし、アミロイドセンサーであるチオフラビンT(ThT)や標識蛍光色素を用いた蛍光解析を行った。 酸性条件下で部分的に変性したリゾチームの光捕捉挙動を調べた。照射開始数分後から、顕微透過像の集光点に丸いパターンが現れ、そのコントラストは照射時間と共に強くなった。さらにレーザーを照射すると、約10分後から集合体が変形し焦点の外側にまで成長した。このように、集合体の形成と成長は二段階で進むことが明らかになった。同様に、ThTの蛍光強度も二段階で変化した。ThTの蛍光強度は、後半の集合体の変形と共に急激に増大した。この変化は、集光点でアミロイドが形成したことを意味し、アミロイド集合体の時空間形成に成功した。 前年度の研究により、ThTの蛍光強度増大が観察される前の集合体は、幅1μm以下、長さ6~7μmの一本のヒモ状構造体が丸まって形成していることが明らかになっている。当初、この集合体は一本のアミロイド線維またはその束からなると考察した。しかしながら蛍光解析の結果は、この集合体がアミロイドではないことを示唆した。アミロイド形成に至る前の中間体のようなタンパク質が集合した場合も、アミロイドのような線維状の構造をとりうることが明らかになった。
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