研究課題
若手研究(B)
化学結合の切断が伴う化学反応や、触媒として用いられる遷移金属錯体の定常状態のシミュレーションには、量子もつれによる複雑な電子の動きを取り入れる必要がある。従来のシミュレーション手法ではこれには高いコストが必要であった。本研究では電子が持つ、スピンについて満たすべき量子力学的な性質を有効に利用することで、量子もつれを低コストに取り扱う新規なアプローチを複数提案した。これらを分子の結合解離曲線やいくつかの遷移金属化合物に適用し、高コストな精密計算と同等の結果を得ることに成功した。
量子化学
太陽光を用いたエネルギー変換技術では触媒反応中心として遷移金属錯体がよく用いられる。本研究の成果として開発された手法は、今まで正確な計算が困難であったこれらの触媒反応機構の解明などに役立つことが期待される。さらにこのような計算から得られる知見によって、触媒の置換基や遷移金属元素を改良した分子設計を行い、新規な化合物を提案することでエネルギー変換効率を向上できるようになると考えられる。