研究課題/領域番号 |
17K14443
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 信也 東北大学, 環境保全センター, 講師 (80570142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルケン / Lewis酸 / 塩基 / 求電子置換反応 / Friedel-Crafts反応 / アシル化 / アルキル化 / ホルミル化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,強いLewis 酸と塩基を共存させる独自の方法により,アルミニウムおよびホウ素Lewis 酸の求電子置換反応(求電子的メタル化)を実現し,それを利用した反応開発を行うことである.しかし,H29年度に,当初課題2「アルミニウムアート錯体を経るアルケンの官能基化」に取り組む過程で,AlCl3/2,6-ジブロモピリジン(DBP)の組み合わせを用いるアルケンのFriedel-Crafts型アシル化を見出した.これを受けて,H30年度は当初の計画を変更し,本アシル化について引き続き取り組むとともに,新たに,アルケンの求電子的アルキル化,ホルミル化,および触媒反応への展開について取り組んだ.なお,Lewis 酸と塩基を共存させる方法論に変更はない. アルケンのアシル化:種々のアルケンを良好な収率でアシル化する手法を確立した.また,反応機構について,Friedel-Crafts型以外にアルケンの求電子的メタル化が考えられたが,前者の可能性が高いとの結論を得た. アルケンの求電子的アルキル化:AlCl3/ピリジンの組み合わせにより1,1-ジフェニルエチレンのアルキル化が進行することを見出した.アルキル化剤は安定カチオンが生じる第3級ハライド,ベンジルクロリド類,アリルクロリド類が適用できることがわかった. アルケンの求電子的ホルミル化:Vilsmeier反応では有望な結果が得られなかったが,TiCl4/DBP存在下にジクロロメチルメチルエーテルによるFriedel-Crafts型反応により1,1-ジフェニルエチレンをホルミル化できた. アルケンの触媒的アシル化およびアルキル化:GaCl3またはInCl3を用いると,一部のアルケンで触媒的アシル化が進行した.また,GaCl3存在下にアルコールにより1,1-ジフェニルエチレンを触媒的にアルキル化することにも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初課題1「BX3/塩基によるアルケンのボリル化」はH29年度に完結した.課題2は上述のように方針を変更し,アルケンのFriedel-Crafts型アシル化を開発した.また,それを受けて方針を変更して取り組んだ,アルケンのFriedel-Craftsアルキル化,求電子的ホルミル化および,アシル化・アルキル化の触媒化については,基質適用性に課題を残すものの,いずれも有望な萌芽的知見を得た. 一方,課題3「アルミニウムLewis 酸/塩基によるカルボキシル化における官能基共存性の獲得」については,H29年度にアリールビニルエーテルのカルボキシル化を見出していたが,収率の向上や適用性の拡大がこれ以上見込めないと判断して中断し,上記の一連のアルケンの求電子置換反応の開発に注力した. 以上のことから,当初の計画とは異なるが,「おおむね順調」に相当する程度の進捗状況にあると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に引き続き,アルケンの求電子的アルキル化,ホルミル化,および触媒的アシル化・アルキル化の開発に取り組む.また,新たに,遷移金属触媒と塩基の組み合わせを用いる反応(例えばエンインの環化付加反応)についても検討する.これらを推進するため,当初計画していた課題4「R2BX/Lewis 酸/塩基による基質適用性の拡大と触媒的ボリル化」については行わない.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,今年度の交付金額分をほぼ予定通り使用したため,昨年度と同程度の金額を次年度使用額として繰り越すこととなった.次年度は,予定通り,基質の合成や反応の検討に必要な薬品・溶剤・クロマト用ゲルの購入費,および成果発表のための費用として使用するほか,故障した物品の更新のための費用とする予定である.
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