3年目の本年度においては生体型のピロールを用いてピリジンユニットと縮合させた環状共役系を生み出した。この共役系においては、ピリジン環の隣接するメゾ位において酸素化が起こりカルボニル基となることが判明した。このカルボニル部分を含んだ共役系にニッケルイオンを作用させることで、選択的にNNNO四配位構造を生み出せることを解明しし、この構造がニッケルイオンを効率よく認識できることを明らかとし、Chem. Asian. J. 誌に報告した。 さらに、ピリドン骨格を含んだ拡張ポルフィリン系を合成した。ピリペンタフィリン(0.1.1.1.0)のピリジン環状にベンジルオキシ基を導入された系において、脱保護によって容易にマクロサイクルの芳香族性が発現することを明らかにした。この芳香環は最長吸収バンドが860 nm程度と長波長領域に有しており、近赤外光を利用した光線力学療法治療剤として有力である。現在さらなる発展を目指して共同研究を行い、この化合物の一重項発生能について調査している。 また、新たな共役系システム構築の一環として、カリックス[n]フランを用いた環状共役系の作成に挑んだ。これまでに報告されているシステムを改良し、1ステップでカリックス[5]フランを合成した上で、カラムクロマトグラフィーと再結晶を利用することで効率よく得ることに成功した。これらについての変換を行うことで、新しいマクロサイクルとしての芳香族性を発現させることに挑んでいる。
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