機能性有機材料への応用が期待できるイプチセン類は、トリプチセン(3つの芳香環が縮環したプロペラ型分子)を構成単位とする芳香族分子であるが、従来の合成法では多くの制限があり、より効率的な合成法が求められている。一方で、報告者らは最近、イノラートが3分子のベンザインと連続的に環化付加反応を起こしトリプチセンを与えることを見出した(ワンポットトリプチセン合成法)。本研究ではイプチセン類の合成を目的とする。31年度においては、アントロンを用いた新規のトリプチセン合成法について検討した。その結果、アントロンの脱プトロン化により調製した活性化アントラセンは、種々のベンザインと反応し、対応するトリプチセンを良好な収率で与えた。また、本手法はペンチプチセンの合成にも応用することができた。
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