研究課題/領域番号 |
17K14450
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
槇田 祐輔 九州大学, 理学研究院, 助教 (00752453)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベンジルエステル / パラジウム触媒 / 脱炭酸 / カップリング反応 / ジアリールメタン / 有機リン化合物 |
研究実績の概要 |
・ベンジルエステルを利用したクロスカップリング反応 ハロゲン化ベンジルは求核剤との反応によって容易にベンジル基を導入すること可能であり、幅広く利用されている。一方で、反応性が高過ぎるために反応剤としての不安定性や環境へ影響が問題となる。本研究では、エステル類をハロゲンの代替とする2種類のクロスカップリング反応を見出した。 エステル類はカルボン酸とアルコールから容易に合成可能である。得られたエステルを金属触媒によって脱炭酸することができれば、縮合と脱炭酸からなる一連の炭素-炭素結合形成反応を対応するカルボン酸とアルコールの形式的なクロスカップリング反応とみなすことができる。本研究により、フッ素置換された安息香酸ベンジルの脱炭酸反応がパラジウム触媒を用いることで効率的に進行し、ジアリールメタン誘導体を高収率で与えることを発見した(研究発表、雑誌論文-1)。本反応は、古典的なクロスカップリング反応において避けることのできない有機金属反応剤由来の副生成物を回避できる。また、基質適用範囲ならびに反応機構についても明らかにすることができた。反応によって得られるジアリールメタン誘導体は医薬品や機能性材料を合成する際の基本的な骨格である。 続いて、種々のリン化合物を求核剤としたパラジウム触媒によるベンジル位置換反応についても見出し、報告した(研究発表、雑誌論文-2)。温和な条件でHorner-Wittig試薬や金属配位子へ利用可能な種々の有機リン化合物が合成可能であった。実際に、カップリング生成物を塩基存在下でアルデヒドと反応させ、立体選択的にアルケンが得られることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラジウム触媒を用いたベンジル求電子剤に対する新たな変換反応を2種見出すことができたため、ベンジル求電子剤を用いる反応の理解が十分に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
同型式の反応にN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子の利用が有効であることがわかってきた。そこで、NHC配位子の適応範囲を調査し、これまでリン配位子を利用した触媒系では効率が不十分であった変換反応の高効率化を図る予定である。 また、安息香酸アリール類の脱炭酸を検討し工業的に価値の高い微アリール骨格の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度の研究成果を基に2018年7月に開催される国際学会で研究発表を行うため。
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