研究課題/領域番号 |
17K14453
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
武藤 慶 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (60778166)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脱芳香族化 / パラジウム / アリル / 芳香族アルコール |
研究実績の概要 |
ベンゼン環は、剛直な平面構造をもつ有機化学を象徴する基本構造体である。芳香族求電子置換反応や触媒的クロスカップリング反応の進展により、芳香環の化学修飾は比較的容易になってきた。しかし、高い芳香族安定化効果により、芳香続化合物の芳香族性を壊しつつ官能基を付与する反応、すなわち脱芳香族的官能基化反応の開発は未だ報告例が限られる。このような脱芳香族的変換反応の実現は、無尽蔵に存在するベンゼン環から有用な三次元骨格をもつ分子の新規合成法となりうる。これまでに知られる脱芳香族的官能基化反応としては、主にフェノールやインドールなどの電子豊富芳香環に限られ、それ以外の芳香族分子に対する当該手法は少ない。本研究では、変換困難な芳香族分子群に対し芳香環上の置換基切断を起点する戦略に基づき触媒的脱芳香族的官能基化の開発を行った。 我々のとった戦略は、遷移金属触媒により置換基のもつベンジル位の結合切断を起点とし、π-ベンジル錯体を中間とすることで脱芳香族的官能基化を実現するものである。本年度の研究では汎用骨格であるベンジルアルコール類に対して、アリルスズを求核剤に用いて、パラジウム触媒存在下にて反応を行った。水酸基上に適切な置換基をいれることで反応効率が大きく変化することがわかり、ホスホナートとすることで高収率で反応が進行し、脱芳香族化を伴いながらアリル基が導入されたシクロヘキシルジエン体が得られた。また、より毒性の低いアリルボラートでも反応が進行した。また、本反応の生成物の誘導化も行い、芳香族化合物から三次元構造をもつ脂環式化合物へ変換する合成法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的としていた脱離基による反応制御が達成されたうえに、アリルスズ限定的だった求核剤をボラートへと拡大できた。目的とする反応の制御に加え、ネックとなっていた単離困難な不安定生成物の誘導化にも成功した。以上の結果から、当初の計画以上に研究は進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究により、芳香族アルコール類の脱芳香族を伴うアリル基の導入法はほぼ確立できたといって間違いない。今後、本研究を他の求核剤をもちいた脱芳香族的官能基化反応の開発へと展開する。現状、アリル基の導入に限られているが、アリル基以外の炭素求核剤などの反応を検討する。アリル求核剤と反応性が全く異なることが予想されるため、触媒のファインチューニングを行い、研究を推進する。
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