研究課題/領域番号 |
17K14458
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大津 博義 東京工業大学, 理学院, 助教 (10547087)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 配位高分子 / 速度論的合成 / 細孔 / 錯体 |
研究実績の概要 |
平成29年度は速度論的合成により、活性ナノ空間を創生するために、種々の配位子を用いたネットワーク錯体の合成を検討した。これまで用いてきたTd対称の配位子の類縁体、すなわち、4-ピリジルを3-ピリジルとしたものを新たに合成し、それを用いた場合、これまでの配位子で生成されたものとは異なるネットワーク錯体が合成できることが明らかとなった。さらに、金属イオンを種々に変えたネットワーク錯体も合成し、合計4種類の活性ナノ空間を作り出すことに成功した。例えば、CuBrを用いた場合、速度論的にCuBr dimer構造をもつネットワーク錯体が、熱力学的にはCuBr helical構造をもつネットワーク錯体が合成できることが明らかとなった。これはCuIの場合とは逆転しており、構造とエネルギーの相関は興味深いものとなっている。また、3-ピリジル基を有するTd対称型配位子とCuIからなるCuIヘリカル型ネットワーク錯体は特異なヨウ素吸着を示した。すなわち、化学吸着を示し、その構造はCuIの3次元ネットワークを組むものであった。これは4-ピリジル基をもつものとは異なる構造であり、種々の物性が期待される。 また、Td型配位子ではなく、それの類縁体であるC3型配位子の合成にも成功しており、それを用いたネットワーク錯体においては、活性ナノ空間にCuの活性サイトおよび官能基由来の活性サイトをもつ協奏的活性空間が生成していることを明らかにしており、これは触媒反応などに新たな展開として用いることができる可能性が高い。 このように、種々の配位子や金属イオンを用いて、種々の活性ナノ空間を創生したこれらの成果は目的とする種々の活性ナノ空間を創生することに当てはまっており、その性質を調べることが今後の展開である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の配位子および金属イオンを用いて種々の活性ナノ空間、すなわち、細孔性ネットワーク錯体を合成することに成功しており、研究目的である活性ナノ空間の創生が行われていることが示されているので、おおむね順調に進展していると考えられる。とくにTd型配位子やその類縁体はその種類を順調に増やしているため、活性ナノ空間の種類を増やすことに成功している。 これからの懸念事項は触媒反応が進むかどうかであるが、材料が増えたことで、適宜反応特性を検討していくことが可能である。特にCuBrをもつネットワーク錯体の場合は、酸化還元触媒となりうるので、その検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、活性ナノ空間を活かし、触媒反応の検討を行う。特に、CuBrを有するネットワーク錯体は酸化されてもその結晶構造を保つことを明らかにしており、酸化還元触媒として利用できると考えられる。また、協奏的活性空間が得られたネットワーク錯体についてはそれを活かした小分子活性化が考えられる。 さらに、これまで得られた活性ナノ空間に硫黄小分子の取り込みを行い、X線解析からその小分子構造を明らかにしていく。細孔の形や大きさがこれまでのネットワーク錯体とは異なることから、これまで得られてきた小硫黄とは異なる構造となることが期待される。
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