研究実績の概要 |
カチオン性メタロゲルミレンとアニリンやアルコールとの反応を検討したところ、複雑な混合物になることが分かった。一方で、カチオン性メタロゲルミレンが二量化した、Ge=Ge二重結合を持つ、ジカチオン性ジメタロジゲルメンを用いてアニリンやイソプロピルアルコールとを室温で反応させたところ、カチオン性のジメタロゲルマニウム化合物が生成することが分かった。比較のために、ジカチオン性ジメタロジゲルメンとトリエチルシランやトリエチルゲルマンとを反応させたところ、カチオン性メタロシリルゲルマニウムおよびカチオン性メタロゲルミルゲルマニウムが生成することが明らかになった。これらは同じE-H(E = N, O, Si, Ge)結合活性化を伴っているが、その反応様式が異なる。これは反応基質の孤立電子対の有無によって反応経路が決定することが分かった。基質に孤立電子対がある場合にはジゲルメンの片方のゲルマニウムにNやOの求核攻撃を行うことから始まり、金属フラグメントがもう一方のゲルマニウムに転位することによってジメタロゲルマニウムカチオンが生成すると考えている。孤立電子対を持たない基質の場合は、ジゲルメンが反応系中で解離し、カチオン性メタロゲルミレンとなり、ゲルミレンがE-H結合を活性化することで得られると考えている。ジゲルメンの置換基の転位反応は基本的には加熱条件下で進行するものであり、このように室温で転位反応を行うものは珍しい。この反応を用いることで、新規の低原子価ゲルマニウム化学種の発や新規ゲルマニウムカチオン種の合成が期待できる。
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