研究課題
本研究では、太陽光中の近赤外線を有効利用するために、状況に応じて近赤外線吸収と透過を切り替え可能な「外場応答型の近赤外線吸収材料の創製」を目的とした。そのために、(1)酸化還元に応じて近赤外線吸収のオンオフが可能な材料開発、(2)材料の酸化体を粘土鉱物と複合化することでの安定化、について検討した。前者では、RuO6型の配位構造をもつ金属錯体に着目した。種々のトロポロン誘導体を配位子とするルテニウム(III)錯体にを合成し、その電気化学および分光電気化学測定を行った。結果として、トロポロン配位子の共役系を伸ばした場合に、一電子酸化体が近赤外吸収を示すことを明らかにした。一般にトリスキレート錯体では、中心金属を介した配位子間の電子的相互作用は弱いとされる。一方、今回合成した錯体では、複数の配位子間の電子的な相互作用が強く確認された。比較のために、[Ru(acac)3]誘導体を各種合成し各種検討を行ったが、これらでは酸化体での顕著な近赤外線吸収は確認できなかった。そのため、トロポロン配位子がノンイノセントな挙動を示したと考えている。一方、粘土表面での規則的な配列化を目指して、金属錯体への長鎖アルキル鎖の導入も行った。この場合、[Ru(acac)3]誘導体では、液晶相が発現する現象を偶然に見出したが、粘土表面への吸着への効果については、明らかにできなかった。そこで、単純な系として[Ru(acac)3]の酸化体を粘土表面に吸着させることを試みた。条件を精査した結果、酸化剤にCANを用いた場合に、酸化体が粘土に吸着し、少なくとも1週間は安定に存在することを、XRD及びATR測定より確認できた。まだ自在なスイッチングとは言えない段階であるが、金属錯体の酸化体をアニオン性の粘土表面で安定化するという方法論の確立に目処をつけることができた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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