研究課題
本研究では、自己組織化能と自己の不斉を選択的に識別して自己組織化する自己不斉識別能を付与した動的ならせん分子・高分子を合成し、その超分子形成を介した相互的かつ階層的なキラル情報の伝達・増幅システムの構築とそれを可能にする分子設計指針の樹立、超分子構造の内部に生じるキラル空間を活用した不斉識別や不斉反応への応用を目指し、以下に示す成果を得た。1. 側鎖にアミノ基を有する4-アミノピペリジン-4-カルボン酸(Api)残基を、iとi+6残基目に導入した動的に光学不活性ならびに光学活性な両親媒性のらせんペプチドを新規に設計・合成し、導入したApi残基の側鎖のアミノ基をほぼ定量的にグアニジル化することにも成功した。また、側鎖にグアニジル基を有する光学不活性ならせんペプチドが、水中で、ジホスフェート誘導体と塩橋を形成するとともに、らせんペプチド鎖間の疎水性相互作用によりバンドル化することで、ハイドロゲルを形成することを見出した。また、光学活性基をN末端またはC末端側に導入した両親媒性のらせんペプチドのアキラルペプチド鎖に、有機溶媒中だけでなく水中においても一方向巻きに片寄ったらせんが誘起されることも明らかにした。2. 側鎖に光学活性なオリゴアミド基を有し、主鎖に金属イオンの配位が可能なリンカーを導入したらせん分子が、溶液中、分子間水素結合を駆動力として積層することで、らせん状超分子集合体を形成することを明らかにした。また、主鎖のリンカー部位に金属イオンが協同的に配位することも見出した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画と期待通り、側鎖に自己組織化能を付与した動的ならせん分子を計算化学を駆使した分子設計を基に合目的的に設計・合成した。本研究で見出したグアニジル基を側鎖に有する両親媒性のらせんペプチドが様々なホスフェート誘導体と塩橋を形成するとともに、ジホスフェート誘導体と水中で塩橋を形成することで、効率的にハイドロゲルを形成するという、当初想定もしていなかった極めてユニークな現象にも遭遇したこと。以上より、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。
前年度までに得た知見をもとに、グアニジル基を有するらせんペプチド鎖が、ホスフェート誘導体との塩橋形成を介した自己組織化により形成するかご状のキラル超分子を構築し、その内部キラル空間への様々のゲストの包接を目指す。また、水溶性のかご状超分子を新規に設計・合成し、疎水性の内部キラル空間に触媒部位を有する疎水性のゲスト分子を水中で包接させるとともに、様々の不斉反応を行い、高活性な水溶性超分子不斉触媒の開発を目指す。さらに、キラルな内部空間を利用した水中での分子識別やキラル識別についても検討する。
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