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本課題は、価数変化を伴う光応答性分子骨格を利用し、光によって物性変化を示すイオン液体の実現を目的とする。本年度はスピロピラン系物質のさらなる分子構造の拡張と、光異性化による液体の輸送特性変化を評価した。
(1) カチオン性スピロピランを含む系について、イミダゾリウム部を側鎖に含む室温イオン液体を合成し、熱物性と単体での光異性化を評価した。また、暗所下では熱反応が進行し、その方向が複雑に変化するという予備的知見を得た。側鎖にホスホニウム部を含む塩を合成し、熱物性を評価したところ、アモルファス固体であった。分岐アルキル鎖を有する中性のスピロピラン分子についても合成経路を確立した。
(2) ピリジニウム環を含むスピロピラン塩結晶について、置換基サイズを変化させた塩を合成し、固相フォトクロミズムを調べた。また、ダイアモンドアンビルセルを用いた高圧下での光照射実験とあわせて、この系の光異性化には特定の結晶内空間が強く関与していることを明らかにした。逆フォトクロミックスピロピラン塩について、アニオン交換方法を新たに開拓した。ドナー能の比較的低いPF6を対イオンとして導入した結晶では、再結晶条件を工夫することで、SP体とMC体の両方を単結晶として単離することができ、構造と固相フォトクロミズムを明らかにした。
(3) アンモニウム塩とスピロピランを混合したイオン液体系を新たに開拓した。前年度のイミダゾリウム系との比較から、スピロピラン塩のイオン液体中での光異性化挙動の傾向を明らかにした。この系について、光照射前後におけるイオン電導度および粘度変化を調べ、光異性化に基づく構造変化による液体物性の変化を観測することに成功した。
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