研究課題/領域番号 |
17K14476
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
酒井 隼人 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (60708486)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MOF / 不斉 / ポルフィリン |
研究実績の概要 |
本研究はキラルMOFを作製し、キラル化合物特有の光物性の一つである円偏光発光を、不斉空間およびホスト-ゲスト特性を用いて高輝度円偏光発光を発現することが目的である。本年度は、キラルMOFを構築するための基盤となる不斉ポルフィリンの合成およびゲスト分子として用いる銀ナノ粒子の合成を行った。ポルフィリン合成は、まずポルフィリン合成前駆体となるジピロメタンを合成した。得られたジピロメタンを用いて一般的にポルフィリン合成に用いられているLindsey法を用いてポルフィリンを合成した。得られたポルフィリンに不斉アルキル基をポルフィリンに導入することとした。しかしながら反応が効率的に進行しなかったため、収率が極めて低くなった。そこでキラルアルキル基を有するジピロメタンを合成した後ポルフィリンを合成する経路に変更することと。そこで、ポルフィリン骨格の前駆体ジピロメタンに不斉源となるキラルアルキル鎖をまず導入し、その後ポルフィリン合成を行うこととした。そこで不斉ジピロメタンを合成した。一方、銀ナノ粒子の作製も行った。既存の方法を利用し行ったところ合成に成功した。動的光散乱測定から数ナノメートルの均一サイズで合成できていることがわかった。合成した銀ナノ粒子を用いてMOFへの導入検討を行った。その際MOFにはキラルアルキル基を導入していないただのポルフィリンMOFを用いて検討を行った。MOF構築の際、銀ナノ粒子を混入して作製した。得られたMOFの蛍光スペクトル測定を行ったところ、銀ナノ粒子に伴う蛍光の輝度の上昇が観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたキラルポルフィリンを用いたキラルMOFの合成は完了していないものの、翌年完了を計画していたMOFへの銀ナノ粒子導入の条件確立を完了し、また銀ナノ粒子導入に伴う蛍光増強が観測された。以上のことから本研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本年度得られたキラルアルキル鎖を導入したジピロメタンを用いてポルフィリンの合成を完了する。得られたポルフィリンを用いてキラルMOFを合成する。X線構造解析から内部構造を決定し光物性評価を行う。次に、本年度確立したMOFへの銀ナノ粒子導入手法を用いて銀ナノ粒子導入キラルMOFの合成を行う。X線構造解析を行い、内部構造を明らかにする。銀ナノ粒子導入が導入されていない場合は、報告されている他の手法を用いて検討する。次に光物性評価を行う。銀ナノ粒子導入に伴う蛍光増強を中心に検討する。最終的に円偏光発光特性評価を行う。円偏光発光が観測されなかった場合、MOF作製の際にキラル分子を柱状配位子として用い、異方性を上昇させることとする。その後、高輝度円偏光発光発現を目指す。さらに、合成したキラルMOFを用いて不斉光反応のための触媒へと展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度合成完了し、大量に合成するつもりであったキラルポルフィリンの合成がうまく進行しなかったため、そのため大量合成ができなかった。またキラルMOFの合成、またその大量合成も本年度できず、来年度にすることになった。したがって、そのために利用する予定であった使用額を来年度に利用することとなった。
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