研究課題
若手研究(B)
電子正孔(e-h)対が前駆体となる電荷再結合は、有機デバイスの性能を左右する重要な素過程である。本研究で開発した光電流・キャパシタンス検出電子スピン共鳴法(EDMR, CDMR)を用いて、動作条件下の有機デバイス内部で寿命が異なる2つのe-h対が存在することを解明した。寿命が短いe-h対は、有機薄膜内部で生じる再結合であることが分かった。一方、寿命がe-h対はアルミ電極界面に存在する空間電荷の再結合に由来し、CDMRで選択的に検出できることを実証した。
スピン化学
低炭素社会の実現が求められている中で、有機半導体は軽量かつ安価な電子材料として注目されている。電荷は電気電導を担う基本単位であり、正と負の電荷が互いに引きつけ合い消滅する再結合は、素子性能を左右する重要な過程である。本研究では、有機素子の再結合過程を調査するために、電気伝導測定と磁気共鳴法を融合した手法を開発した。本手法によって、これまで素子性能のボトルネックとされていた有機半導体内部の速い再結合だけでなく、電極界面に蓄積した電荷の遅い再結合を初めて明らかにした。蓄積した電荷の解消が高性能素子の実現の糸口になることを見出した本研究成果の学術的意義は極めて大きい。