研究期間全体を通じての成果 本研究ではこれまでに合成が困難であった1nm程度のサイズからなる合金クラスターの精密合成を達成した。また、その合金クラスターの触媒機能を調べることで、空気中の酸素を酸化剤とした炭化水素化合物の酸化反応において当初の予想を上回る高い触媒活性を示すことが明らかになった。この研究結果は、合金クラスターの触媒としての可能性を示す研究成果であり、触媒性能の高い新物質の発見は省資源化に繋がるため重要な意義のある研究成果であると考えられる。また、研究期間の後半では合金クラスターの不安定性についての知見も得られた。この点については研究の課題であり、今後更なる検討が必要となる。
最終年度で実地した研究 昨年度までは白金と銅の合金触媒を用い、ベンジル位の水素を持たないtert-ブチルベンゼンの酸化反応の検討を行ってきたがこのような反応性の低いC-H結合の酸化反応を行うには高い反応温度など厳しい反応条件を必要とすることがわかった。また、このような厳しい反応条件で反応を行うと、合金ナノ粒子の銅原子が酸化されてしまい酸化銅となり、白金と相分離してしまうことがわかった。したがって、最終年度ではより温和な条件で反応を行うため隣接基を持った基質で検討を行うこととした。具体的にはピリジン環を、隣接基として持つtert-ブチルベンゼンを用いて反応を行うこととした。そこで、まずこの反応基質の合成を行った。鈴木-宮浦クロスカップリング反応を用いて合成を試みたところ目的の化合物を収率よく合成することができた。現在、この基質を用いて更なる検討を行なっている。
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