研究課題/領域番号 |
17K14483
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
戸田 泰徳 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (60758978)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 二官能性触媒 / ホスホニウム塩 |
研究実績の概要 |
近年、有機分子触媒の利用は金属触媒に頼らない精密有機合成を実現するアプローチとして注目を集めているが、その多くは酸・塩基触媒であり、他の機能をもつ有機分子触媒の開発が望まれている。本研究は“ホスホニウム塩”を触媒官能基として導入し、従来とは根本的に活性化様式の異なる有機分子触媒の創製をめざしている。本研究の目的は、新規有機分子触媒の創製と機能開拓ならびに触媒作用の解明とともに、高効率・高選択的反応の開発と医薬品などへの合成化学的応用である。 研究目的に沿って、H29年度はこれまで開発に成功しているホスホニウム塩触媒系を主軸として、さらなる触媒反応の開発と新規触媒の設計開発を併行して実施した。まず、エポキシドと二酸化炭素のカップリング反応をベンチマークとして新規触媒の機能評価を行った。ホスホニウム塩触媒の置換基を種々検討したところ、リン原子上に電子豊富なアリール基を有するホスホニウム塩を触媒として用いるとその活性が向上するという興味深い結果が得られた。続いて、反応機構に関する知見を得るため量論量のホスホニウム塩を用いた反応や単離した中間体を用いた反応を行い、触媒の構造や置換基が反応のどの段階に関与しているかを明らかにした。さらに、DFT法を用いて遷移状態構造の計算を行い、エポキシドと二酸化炭素のカップリング反応におけるエネルギーダイアグラムを得た。また、エポキシドとイソシアネートのカップリング反応を検討し、開発したホスホニウム塩が同反応の極めて有効な触媒となることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究で開発したテトラアリールホスホニウム塩に関しては、触媒ライブラリーを構築し高活性な触媒の開発や反応系の探索を行っており、一定の目標は達成されたと考えている。一方、不斉触媒に関しては、いくつかキラルホスホニウム塩触媒を合成して反応に用いたものの、エナンチオ選択性の発現には至っていない。また、ホスホニウムイオンをルイス酸として利用する二官能性触媒の合成は十分検討できていない。したがって、現在までの進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
エポキシドと二酸化炭素ならびにイソシアネートのカップリング反応については、継続的に反応機構解明を行うとともに、DFT計算により得られた知見に基づきさらなる反応の効率化を行う予定である。特にイソシアネートの反応に関しては、エポキシドとしてグリシドールを用いた場合にオキサゾリジノンの位置異性体が得られるという知見が得られており、ホスホニウム塩の新しい触媒能の開拓が期待される。また、不斉触媒や新規二官能性触媒の開発も引き続き行いたいと考えている。
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