研究課題/領域番号 |
17K14484
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀部 貴大 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (20756655)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジハロゲン化反応 / ヨードクロロ化反応 / ブロモクロロ化反応 / Lewis塩基 / エナンチオ選択的反応 / カルコゲン触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、キラルLewis塩基-Lewis酸協奏的触媒によりハロゲン分子の制御を行い、エナンチオ選択的ジハロゲン化反応の開発を研究課題とする。エナンチオ選択的ジハロゲン化反応の中でも、エナンチオ選択的ヨードクロロ化反応およびエナンチオ選択的ブロモクロロ化反応への適応できる触媒システムの開発を主なターゲットとした。アルケンのヨードクロロ化反応やブロモクロロ化反応は、海洋性の生理活性物質に見られる1,2-ジハロゲン化合物を1ステップで構築することのできる最も効率的な方法の一つである。一方、高い反応性を有するハロゲン分子(一塩化ヨウ素および一塩化臭素)の特性から、官能基耐性に乏しく副生成物が生じやすい。また選択性の発現のためには、官能基を持たないハロゲン分子を制御する必要がある。そこで、初年度はまず1)副反応を抑制したジアステレオ選択的ヨードクロロ化反応の開発に重点を起き、研究を実施した。その結果、副反応の併発しやすいヨードクロロ化反応を円滑に進行させることのできるシステムの開発に成功した。本触媒システムの鍵は、ハロゲンLewis酸-カルコゲンLewis塩基によりハロゲン分子を挟み込むことで反応性の制御を行う点である。その結果、ハロゲン分子の反応性に依存した副生成物を抑制し、ジアステレオ選択的ヨードクロロ化反応の開発を行うことができた。平成30年度は引き続き官能基耐性の高いヨードクロロ化反応の開発を行うとともに、2)エナンチオ選択的ヨードクロロ化反応の開発を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、初年度はジアステレオ選択的ヨードクロロ化反応の開発を重点的に実施した。Lewis塩基部位にチオウレアを有する触媒を用いることで、系中での一塩化ヨウ素(I-Cl)の生成に成功し、ヨードクロロ化反応の開発に成功した。本触媒システムでは、I-Clのみでは副反応が進行してしまう基質でも円滑にヨードクロロ化反応を進行させることができた。また官能基耐性も高く、複数の官能基の存在下でも副反応を進行させることなく対応する生成物を高い収率で与えた。X線結晶構造解析やNMR解析を基にした反応活性種の解析から、触媒システムのI-Clの制御メカニズムも明らかにした。その結果、本触媒システムは系中で徐々にI-Clを生成できることに加えて、Lewis塩基-Lewis酸とのハロゲン結合を形成することによりI-Cl反応性を制御できていることがわかった。すなわちLewis塩基およびハロゲンLewis酸によるI-Cl の捕捉により、I-Clそのものの反応性を制御できていた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究において、Lewis塩基・Lewis酸協奏的触媒のヨードクロロ化反応での有用性を見いだすことができた。今後はその知見をもとにブロモクロロ化反応の開発を行う。より反応性の高い一塩化臭素を用いても、副反応の進行を抑制することのできる触媒システムの開発を目指す。またキラルな触媒を設計し、高エナンチオ選択的反応の開発を目指す。キラルチオウレア触媒はこれまで複数の合成の報告がなされている。こうした既存のキラルチオウレアの合成知見をもとにヨードクロロ化反応に適用可能な新規キラルチオウレア触媒を設計し触媒反応に用いる。また反応後に得られるジハロゲン化生成物を化学変換することで、海洋性の生物活性天然物や医薬品へと誘導する。
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