研究課題/領域番号 |
17K14489
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
南木 創 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員 (40793980)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機能性高分子 / ポリチオフェン / 分子認識 / 高分子トランジスタ / 電解質ゲート |
研究実績の概要 |
本研究では,分子認識能を組み入れたポリチオフェンを基に,新奇デバイス構造に基づく有機トランジスタ(OTFT)型センサの開発に取り組む。平成29年度は以下の内容を検討した。 1) 分子認識能を賦与したポリチオフェン誘導体の合成:薄膜形成時に再現性の良いトランジスタ特性および応答能を得るため,レセプタ導入型チオフェンおよびアルキルチオフェンをそれぞれモノマーとする共重合体を合成した。レセプタには,配位結合能に基づくリン酸イオン類認識を指向し,亜鉛(II)-ジピコリルアミン錯体(Zn(II)-dpa)を選定した。また,塩化鉄(III)によるランダム共重合をおこなうことで,合成の簡便化を図った。当該合成材料の溶液中における分子認識能を光学的に調査したところ,リン酸二水素イオンの濃度増加に応じた蛍光発光が観測された。これは,本化合物がリン酸イオン種認識能を有することを示しており,今後デバイス化を検討する。 2) 電解質ゲート型OTFTの検討:電子デバイスによる水系媒質中の標的種検出を達成するため,電極/電解質接触界面に形成される電気二重層キャパシタ(EDLC)の活用を試みた。本検討では,半導体材料としてカルボキシ末端基を側鎖に擁するポリチオフェン(市販品)を用いた。デバイス特性を評価したところ,低電圧印加(< 0.3 V)において再現性の良い非線形電流応答特性が得られた。また,カルボキシ基との相互作用による捕捉が期待される標的種(ヒスタミン)を電解質溶液に添加したところ,濃度増加に応じた電流増幅が観測された。これは,半導体/電解質溶液界面に分子認識部位を直接組み込むことで,参照電極を要さずに電荷変調に基づく化学種の電気検出が可能であることを示唆している。これらの結果は,電解質ゲート型OTFTにレセプタ導入型ポリチオフェンを導入することで,容易に化学センサを構築し得ることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年次目標としていたレセプタ導入型ポリチオフェン誘導体の合成および分子認識能の調査を達成した。さらに,次年度目標としていた電解質ゲート型OTFTの検討においては,市販材料を活用することで既に基本的なデバイス構造を確立した。得られた成果の一部は既に学会発表を行うとともに,誌上発表に向けて論文投稿をおこなった(現在審査中)。
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今後の研究の推進方策 |
電解質ゲート型デバイスに対し,合成したレセプタ導入型ポリチオフェンを活性層として組み込むことで,標的種の電気的検出に取り組む。得られた結果を蛍光滴定実験の結果と比較し,ポリチオフェンの液相と固相での分子認識能の違いについて議論することで,化学センサデバイスに向けた分子およびデバイス設計にフィードバックをおこなう。また,得られた知見を基に,様々な標的種に対応したポリチオフェン誘導体類の合成と,多検体検出に向けたOTFTの集積化に取り組む。
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備考 |
受賞等:“The TOP3 paper most cited during 2016 in each category”(日本分析化学会,2017年6月) 報道等:“Cover Profile”, ChemstryOpen誌 Volume 6, Issue 4, p.455 (2017年7月掲載)
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