平成30年度は,前年度までに確立した電解質ゲート型有機トランジスタ (OTFT) の基本構造をベースに,化学センサとしての更なる高機能化(多検体検出および高感度化)に向けた検討を行った。 1) 電解質の分子サイズに着目したOTFT特性制御手法:多検体検出を可能とするセンシングシステムを実現するには,OTFT型化学センサのアレイ化が必要となる。OTFTの電気特性は一般的に不均一であることから,アレイ化に際しては精密な特性制御手法を確立しなければならない。そこで,OTFTの誘電層となる電気二重層キャパシタ (EDLC) の構成電解質種に着目した。OTFTにアルキル鎖長の異なるテトラアルキルアンモニウムアンモニウム塩を種々適用したところ,その鎖長変化に応じたOTFT閾値電圧の可逆的変化が観測された。同様に,EDLCの静電容量が電解質種のアルキル鎖長に依存する結果が得られた。これらのことから,電解質種の分子サイズに着目したOTFT特性の新たな制御手法を見出した。 2) 高感度化に向けた分子認識部位の検討:化学センサの高感度化に向けた新たな材料設計指針を見出すため,分子認識部位に対する共役性骨格の導入を検討した。共役性を有する芳香族カルボン酸をレセプタを用い,モデル標的種(ヒスタミン)に対する電気的応答を調査したところ,脂肪族カルボン酸を用いた場合と比較し検出限界が1/10以下となる結果が得られた。本結果から,センサデバイスの高感度化に際し,分子認識部位への共役性骨格の導入が有効であることを実証した。なお本成果についてまとめた論文については,掲載誌のOutside Front Coverに選定された。
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