研究実績の概要 |
2018年度はビスフェニルベンゾエート構造を主鎖に導入した主鎖型液晶性高分子を合成し、偏光顕微鏡観察、示差走査熱量測定、および広角X線回折測定により、それらの相転移挙動を評価した。1,n-ビス(4'-カルボキシフェニルチオ)アルカンを合成し、それらを塩化オキサリルで酸塩化物化したモノマーと、ターシャリーブチルヒドロキノンとの溶融重合により、ビスフェニルベンゾエート構造を主鎖に有し、主鎖のアルキレン鎖の炭素数(n)が6から9の4つのポリマー類似体を合成した。ターシャリーブチル基は、溶解性を付与するために導入した。アルキレン炭素が7のポリマーを除く3つのポリマーが液晶性を示し、それらの相転移挙動には明確な偶奇効果が見られた。側方位に嵩高いターシャリーブチル基があるにも関わらず、層構造を有するスメクチック相を形成した。それらの原因として、昨年度までに報告してきたアルキルチオ基による分子間引力相互作用が考えられる。一方で、全てのポリマーが室温ではガラス化し、それらの液晶状態の配向を室温にて保持できることがわかった。また、主鎖のアルキレンの炭素数が6のアルキルチオモノマーと、そのアルコキシモノマー類縁体を様々なモル比でブレンドした共重合体を合成した。その結果、全ての共重合体で流動性が高く光学材料用途において最も重要なネマチック相を示すことがわかった。これらも全て、室温ではネマチックガラス状態を示すことがわかった。
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