トレハロースはマイコバクテリアに対して分子認識能を持つ二糖であり、疎水基導入によるミセル形成が報告されている。本研究では、この両親媒性トレハロースを糖鎖高分子化の手法と組み合わせることにより、糖クラスター効果に基づいた高い標的指向性と分子内包性を併せ持つ分子輸送キャリアを開発することを研究目的とする。研究目的の達成は、以下の検討を行うことにより達成を目指す。 (1)チオラクトンモノマーを用いるトレハロース高分子の合成 (2) トレハロース高分子ミセルの調製および基礎物性評価 (3)トレハロース高分子ミセルを用いたマイコバクテリア認識能評価
平成30年度では、前年度に確立された(1)の合成法に基づき種々の両親媒性構造を有するトレハロース高分子を作製し、水中で高分子ミセルを形成させた後に(2)および(3)の検討を行った。 (2)の検討においては、安定性や分子内包機能および基礎的な分子認識特性について研究を実施した。その結果、調製したトレハロース高分子ミセルは水中において、温度変化に対して比較的安定であり、疎水性蛍光分子を内包する機能を示すことが明らかとなった。また、トレハロース高分子ミセルはコンカナバリンAレクチンに対してグルコース構造由来の高い分子認識能を示すことが確認された。さらに(3)に関しては、蛍光分子内包トレハロース高分子ミセルを用いて、Mycobacteria Smegmatisに対する分子認識能特性および送達能試験を実施しており、現在その解析評価を進めている。
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