研究課題/領域番号 |
17K14496
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大河平 紀司 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (60629210)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分子動力学法 / ミセル / 小角X線散乱 / 分子集合体 / 計算化学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、分子集合体をはじめとする機能性分子の水溶液中における構造およびダイナミクスを、小角X線散乱(SAXS)等の実験的手法と、分子動力学法をはじめとする計算化学的手法の融合によって解析する手法の確立を目指している。脂質、タンパク質、核酸などの生体内で機能を発現する分子、およびミセルやリポソーム等のソフトな分子集合体の構造的理解は、それらの機能を十分に利用するために必要不可欠である。特に、多くの機能性分子は水溶液中でその機能を発現するため、水溶液中における立体構造や相互作用の理解は、科学者にとって非常に有意義な情報となる。 平成29年度はSAXSの散乱データから静的分子モデルを構築する手法の確立を目的とした。研究対象として、既往の研究により小角X線散乱およびその他の実験的手法により会合数等が明らかとなっているカリックス[4]アレーンが形成するミセルを採用し、計算化学的手法である分子力学法および分子軌道法を駆使して単分子モデルを作成した後、SAXSの結果から予想されるミセルのサイズになるよう三次元的に配置することでミセル体の分子モデルを作成した。その後、CRYSOLにて分子座標より理論的にSAXSのプロファイルを求め、SAXSの実験結果とフィッティングを行い、適宜分子座標を修正することで、より現実系に近いサイズ、形状のミセル構造を得ることが可能となった。 タンパク質をはじめとするマクロな分子の動的挙動の検討には、計算化学的手法の1つである分子動力学(MD)法が有効である。このMD法の結果は、計算開始時の初期構造に大きく依存することが知られていることから、今回の研究で確立した方法にてMDシミュレーションで利用する初期構造を作成することで、より信頼性の高いシミュレーション結果が得られることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、分子集合体をはじめとする機能性分子の水溶液中における構造およびダイナミクスを、小角X線散乱(SAXS)等の実験的手法および計算化学的手法の融合によって解析する手法の確立を目指しており、平成29年度はSAXSの散乱データから静的分子モデルを構築する手法の確立を目的として研究を遂行した。 これまでの研究により、化学修飾を施したカリックスアレーンが、pHの異なる溶液中において様々な会合数を示すことが明らかとなっている。そこで本年度は、単純な分子骨格を有するカリックス[4]アレーンを研究対象とし、まずは分子力学法、分子軌道法を駆使してカリックスアレーン単分子モデルを作成した。その単分子モデルを、実験的手法にて明らかとなっている会合数の数だけ用意し、さらにSAXSにて予測されるミセルのサイズになるよう三次元的に配置した。その後、CRYSOLプログラムにて理論的に散乱カーブを算出し、適宜SAXSの結果とフィッティングを行うことで、より実験的手法にて得られた散乱カーブに近いミセル構造を作成する手法を確立した。一方で、SAXSの散乱プロファイルからある程度のミセルのサイズと形状を予測することができるDAMMINプログラムの検討も行ったが、今回の系のような比較的小さな分子集合体では、予測結果が仮想ビーズのサイズと数に依存したため、パラメータの決定が非常に難しいことが示唆された。しかし、本プログラムはタンパク質のような大きなサイズの分子の形状予測には力を発揮することから、分子集合体に関してはある程度のサイズのものであれば適用可能だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作成したミセル構造を初期構造として分子動力学(MD)法を実行し、初期構造の妥当性を評価するとともに、ミセル構造のダイナミクスについて解析する。また、SAXSの散乱プロファイルとよく合う、または合わないモデルの評価法について、類似度を用いて評価する方法の確立を行う。これらの解析には膨大な数のデータを処理する必要があるため、解析に有効なプログラム(アプリ等)の開発もあわせて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集および研究成果について学会等にて報告するための旅費を計上していたが、平成29年度では実現できなかったため、平成30年度にあわせて使用する計画である。
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