本研究課題では、マイクロデバイスにタンパク質の結晶を集積化(アレイ化)し、オンチップでX線結晶構造解析を行い、タンパク質の立体構造を決定する手法の開発に取り組んだ。マイクロデバイスは、一般的なソフトリソグラフィーによってPDMS流路を作製し、シクロオレフィンポリマー薄膜と接着することで作製した。デバイスの厚みは、220 um~500 umとした。タンパク質の結晶をアレイ化するために、①昨年度まで取り組んでいたオンチップで結晶化を行いマイクロウェルにアレイ化する方法、②オフチップで結晶化を行い、調製した結晶懸濁液をデバイスに送液して、マイクロウェルにアレイ化する方法を確立した。 また、オンチップX線結晶構造解析の方法として、100Kにおいて凍結した1個の単結晶から回折データを取得する従来の方法から、室温下において複数の単結晶から回折データを取得し、それぞれの回折データをマージして立体構造を決定する方法を確立した。モデルタンパク質として、リゾチームのオンチップX線結晶構造解析をフォトンファクトリー、および、SPring-8で行なった。その結果、室温下においても1.5オングストローム程度の分解能で構造決定可能であった。従来の方法では、放射線損傷の影響を避けるために100Kの超低温下で測定を行なっていたが、室温での測定が可能となったため、より生理条件に近い状態での立体構造解析が可能となった。今後は、様々な種類のタンパク質の構造解析へ応用し、タンパク質-リガンド複合体の解析などへの応用を目指す。
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