研究課題/領域番号 |
17K14501
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
内田 太郎 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 助教(特定雇用) (70581643)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 表面増強赤外吸収 / 固液界面 / 固気界面 / 偏光測定 |
研究実績の概要 |
本年度は、実験的にATR配置の表面増強赤外吸収(ATR-SEIRA)の偏光依存性を実験的に明らかにすることを目標に行った。さらに、それと同時に分析化学的な応用を念頭に置いた実験も行った。 1)金属薄膜の膜厚および形状依存性の検討:ATR-SEIRAの金属薄膜の膜厚および形状依存性の検討を行った。その結果、膜厚がある程度大きくなるとp偏光でのみ、吸着分子の信号が得られることが分かった。また、膜厚の制御により、界面からバルク方向への空間分解測定の可能性を見いだした。しかし、膜厚により最表面での金属微粒子の形状が異なっている可能性があり、膜厚と金属微粒子の形状のどちらの影響によってその様な結果が得られているのかが明らかでない。そこで、現在ナノビーズアレイ等を用いたSEIRA活性を持ちかつ規則的構造を有する表面を再現よく構築する方法を検討している。 2) 界面計測への応用:通常のATR-SEIRAを測定する際のSEIRA活性を有する表面で既に偏光依存性が得られることから、ATR-SEIRAがこれまで苦手とした自己組織化膜の絶対スペクトルの測定を行った。電極表面上のp-アミノチオフェノールの吸着挙動は、通常のATR-SEIRAの場合、電位差スペクトルを測定するため、一見、電位により配向が大きく変わるように思われたが、偏光ATR-SEIRAから、電位に対してほぼ吸着配向が変化しないことが明らかとなった。 さらに、これまでは金属表面といった理想型に近い実験系を用いていたが、多孔質細孔内の表面などの実用表面計測に対応するため、メソポーラスシリカや活性炭といった細孔内の表面の表面構造制御の基礎的検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように理論化のための基礎的実験の検討は、まだ理論の構築までには至っていないが、おおよその傾向が観測された。また、応用については、これまで通常のATR-SEIRAが苦手にしていた測定が容易に出来る様になったことを示したこと、さらに、実用表面計測への基礎的検討も行えたことから、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の結果をもとに、H30年度では以下の各実験に取り組む 1)偏光SEIRAの金属薄膜形状依存性の詳細検討:研究実績の概要でも触れたが、詳細に偏光依存性を検討するため、精密表面形状制御が必要である。そこで、ナノビーズアレイ等を用いたり、形状制御した金属コロイドを表面へ固定したりするなどの方策によりその問題を解決したい。さらに、それをもとに偏光SEIRAの理論化を試みたい。 2)界面計測への偏光SEIRAの応用:界面計測への応用については、平成29年度同様にATR-SEIRAが苦手としていた測定系を測定することで、新たな知見を得たいと考えている。実用表面計測については、今回の細孔内表面の表面形状制御の基礎的検討の結果から、偏光ATR-SEIRAを用いて細孔内の測定を行えるようにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の様に、当初予定した実験と多少様相が異なったために、予定していた実験の試薬等の物品費を繰り越した。 次年度使用額は、平成30年度請求額と合わせて物品費として使用し、来年度は実験手法を変えて実験を行う予定である。
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