研究課題/領域番号 |
17K14502
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
下赤 卓史 京都大学, 化学研究所, 助教 (40609921)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有機フッ素材料 / SDA理論 / ダイポールインタラクティブ / 赤外外部反射(ER)法 / 表面モード / パーフルオロアルカン |
研究実績の概要 |
我々のグループは,有機フッ素材料が示す特異的なバルク物性の分子論的起源を明らかにする研究を行ってきた(SDA理論).その中で,有機フッ素鎖が集合していない“孤立鎖”の状態では,C-F結合に沿って現れる大きな双極子の影響により,水分子と強く相互作用することを明らかにしてきた.バルクでみられる撥水性とは全く異なる孤立鎖特有の性質として,ダイポールインタラクティブ(DI)性と呼んでいる. 前年度,分子集合能が低いため揮発しやすい短鎖のパーフルオロアルカンが,水表面で1~2時間も保持されることを,水面上の赤外外部反射(ER)法により明らかにした.しかし,sおよびp偏光を用いて測定したERスペクトルは,①外部反射法の表面選択律に則さず,②バンド形状がバルク試料とは大きく異なっていた. 今年度はこれら2つの現象の原因を明らかにする研究に取り組んだ.具体的には,ATRプリズム上に滴下したパーフルオロアルカンが揮発する過程の赤外スペクトル変化を調べた.試料は数10秒程度で揮発するため,FT-IRのラピッドスキャンモードを用いて,約0.1秒ごとのスペクトル変化を追跡した.その結果,液膜が薄膜化したときに,水面上で現れたものと同様の振動バンドが現れることがわかった.詳細な検討・解析の結果,このバンドは分子の基準振動ではなく,集合体の表面モード由来であることがわかった.水面上のパーフルオロアルカンは単分子として吸着・固定化しているわけではなく,ある程度自己集合した状態で水面に残存することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度,分子集合能の低い短鎖のパーフルオロアルカンが水表面で長時間保持されることを,赤外外部反射法により明らかにした.しかし,①振動バンドは外部反射法の表面選択律に則さず,②バンド形状がバルク試料とは大きく異なることが分かった.今年度はこれら2つの現象の原因を明らかにする研究に取り組み,液膜が薄膜化したときに現れる表面モードであることがわかった.次年度,本来予定していたガス分子の吸着実験に移行する.
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今後の研究の推進方策 |
有機フッ素化合物へのガス吸着実験へと移行する.現在開放系でおこった吸着について分光測定を行っているが,閉鎖系で測定を行えるように工夫し,ガス濃度を制御した測定を行う予定である.ガス濃度が低い場合は,スペクトル変化が小さい可能性もあるが,その場合は必要に応じてケモメトリックスを用い,微小なスペクトル変化を引き出して解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度,分子集合能の低い短鎖のパーフルオロアルカンが水表面で長時間保持されることを,赤外外部反射法により明らかにした.しかし,①振動バンドは外部反射法の表面選択律に則さず,②バンド形状がバルク試料とは大きく異なることが分かった.今年度はこれら2つの現象の原因を明らかにする研究に取り組み,液膜が薄膜化したときに現れる表面モードであることがわかった.次年度,本来予定していたガス分子の吸着実験に移行する.
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