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2017 年度 実施状況報告書

酵素を用いた有機系多価イオンの簡易・高感度分析法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 17K14503
研究機関福井県立大学

研究代表者

植松 宏平  福井県立大学, 生物資源学部, 講師 (30547584)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード酵素 / 多価イオン / 比色分析 / グルコースオキシダーゼ / ε-ポリリジン / フェリシアン化物イオン
研究実績の概要

我々グループでは,天然の抗菌活性物質であるε-poly-L-lysine (εPL)が,ある種のグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素反応速度を1万倍も増大することを見出し,同効果を利用したεPL高感度分析法を提案してきた。同効果は,プロトン付加により正電荷を帯びたεPLと負電荷を帯びたGOx間の静電相互作用に起因する。故にεPL以外の他の多価カチオン物質においても同効果が期待され,本研究では同酵素反応系を利用した多価カチオン物質(及びポリアニオン物質)高感度分析法の構築を目指している。
εPLは+25-35価の多価カチオン物質である。そこで当該年度の研究では,数価の多価カチオン物質(+3-6価程度)においても同効果が現れることを,リジンオリゴマー側鎖を持つ抗生物質ストレプトスリシン(ST),またアミノ基を複数持つアミノグリコシド系抗生物質(AG)を用い実証した。さらに電荷数の異なるいくつかのST及びAG種を用いた検討を行うことで,それらの速度増大効果が,電荷数依存的に増大することを明らかにした。後者の知見は,提案する分析法が,電荷数のより大きな多価カチオン選択的分析法に成り得ることを示す結果であり大変興味深い。提案する分析法の検出感度を調べた結果,STおよびAGにおいても,+4価以上であれば1ppm以下の検出感度を有することが示された。また提案する分析法の実分析への応用として,ST生産菌の培養液に本法を適用した結果,50 ppm程度のSTを,培養液の前処理なしに,市販の試薬と混ぜるだけで容易に検出可能であることを示した。さらに上述の検出感度特性を利用することで,本法がより長いリジン側鎖を持つST生産菌のスクリーニング法にも成り得ることを示した。
その他,本研究課題の関連研究として,εPLのGOx酵素反応速度増大効果を利用したグルコースセンサ構築に関する研究も行い,センサ構築におけるεPLの有用性を示す知見を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画通り,数価の多価カチオン物質の酵素反応速度増大効果に関する詳細な知見を得ることができ,また提案する手法による多価カチオン高感度分析が可能であることを示せた。また当初の期待通り,多価カチオン物質の電荷数依存的な酵素反応速度増大効果が確認され,提案する分析法が,より電荷数の多い多価カチオン物質選択的な分析法であることを示せた。よって,本研究課題の進捗状況は,概ね計画通り進んでいると判断できる。

今後の研究の推進方策

提案する分析法が多価カチオン分析法として広く有用であることを示すために,STやAG以外の他の多価カチオン物質においても,その高感度検出・定量が可能であることを示す。具体的にはスペルミンやスペルミジン等のポリアミン,また除菌剤として広く利用されているポリヘキサメチレンビグアナイド等を対象とした検討を進める。
多価カチオン(ポリカチオン)は,所定の条件でポリアニオンとの定量的なポリイオン複合体形成反応を示す。よってポリアニオンはポリカチオンの酵素反応速度増大効果を定量的に妨害することが期待され,本研究で提案した多価カチオン分析法はポリアニオンの高感度分析法にも応用できることが期待される。そこで本年度の研究計画に従い,同多価カチオン分析法を応用した高感度ポリアニオン分析法の構築を進める。

次年度使用額が生じた理由

実際の研究の進捗状況に応じた適切な助成金の使用により,差額が生じたものと判断できる。その額は小さく,今年度の実験材料費,論文投稿費用などに利用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Promotion Effect of Streptothricin on a Glucose Oxidase Enzymatic Reaction and Its Application to a Colorimetric Assay2018

    • 著者名/発表者名
      UEMATSU Kohei、UENO Takaaki、KAWASAKI Haruka、MARUYAMA Chitose、HAMANO Yoshimitsu、KATANO Hajime
    • 雑誌名

      Analytical Sciences

      巻: 34 ページ: 143~148

    • DOI

      10.2116/analsci.34.143

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effect of ε-Poly-L-lysine on a Glucose Sensor Based on Glucose Oxidase and Ferricyanide Ion2018

    • 著者名/発表者名
      UEMATSU Kohei、UENO Takaaki、KATANO Hajime
    • 雑誌名

      Analytical Sciences

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] アミノグリコシド系抗生物質のグルコースオキシダーゼ酵素反応増大効果とその比色分析への応用2017

    • 著者名/発表者名
      植松宏平,荻真太郎,上野隆晃,片野 肇
    • 学会等名
      第77回分析化学討論会
  • [学会発表] ε-ポリリジン-グルコースオキシダーゼ複合体固定化電極の特性評価2017

    • 著者名/発表者名
      上野隆晃,片野 肇,植松宏平
    • 学会等名
      第36回分析化学中部夏期セミナー
  • [学会発表] アミノグリコシド系抗生物質のグルコースオキシダーゼ酵素反応速度増大効果2017

    • 著者名/発表者名
      植松宏平,荻新太郎,上野隆晃,片野 肇
    • 学会等名
      平成29年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] ε-ポリリジン-グルコースオキシダーゼ複合体固定化電極の特性評価2017

    • 著者名/発表者名
      上野隆晃,片野 肇,植松宏平,
    • 学会等名
      平成29年度北陸地区講演会と研究発表会

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公開日: 2018-12-17  

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