本年度では,まず前年度から引き続き,提案する多価カチオン分析法の有用性の検証を行った。多価カチオン物質として,分析事例が比較的多いポリヘキサメチレンビグアナイドを検討した結果,同多価カチオン物質でも明瞭な酵素反応速度増大効果が確認され,吸光度計を用いた分析では0.1 ppmレベルでの定量分析が,また目視でも同レベルの半定量分析が可能であることが確認できた。この定量感度は他の比色法と比較しても十分高い。 多価カチオン物質の酵素を用いた高感度定量法が構築できたため,これを利用したポリアニオン分析法の検討を行った。これはポリカチオンとポリアニオンの定量的ポリイオンコンプレックス形成を利用したものである。ポリアニオンとして,ポリビニル硫酸,ポリスチレンスルホン酸,アルギン酸,ポリアクリル酸,ヘパリンを用い,これらポリアニオンの所定のpHにおける電荷量を,コロイド滴定により見積もった。この値を用い,提案する分析法の妥当性を電荷量に基づく検量線を作製することで評価した。検討したすべてのポリアニオンにおいて実験誤差内で同一の検量線が得られ,ポリアニオンの定量分析が可能であることが分かった。その分析感度は1μeqMレベルであり,比色分析法として十分高い感度を示した。本法の実分析への応用として,血漿中のヘパリン分析に適用した結果,血漿中1-8 unit/mLヘパリンの分析が可能であり,実分析にも耐えうる分析性能を有していることが確認できた。
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