研究代表者が独自に開発した「波長計制御型キャビティリングダウン分光法(CRDS)によるガス中微量水分計」を用いたスペクトル測定の高感度化・高分解能化に向けた研究を行った。共振器の共振周波数とプローブレーザーの周波数を1台の波長計を用いて同時に制御することを可能にした。それにより、フィネスの高い共振器(反射率の高いミラーを用いた共振器)を用いたリングダウン時間測定を長時間安定して行うことを可能とし、超高感度なスペクトル計測技術を確立することができた。さらに、共振器の共振周波数を任意に設定できるようにして、従来のCRDSによる測定では制限されていた高分解能なスペクトル測定を実現することができた。スペクトルの縦軸(吸収強度)、横軸(周波数)、ともに精度良く測定することができるようになり、解析に用いる関数について、および測定で得られる水の吸収断面積について、詳細な検証を可能にした。 平成31年度は、前年度までに開発した測定装置を用いて、微量水分標準ガスの測定を行った。測定を進める中で、光が照射されるミラーの位置によって反射率が僅かに変わり、それが原因でリングダウン時間の値が変動することを発見した。そこで、共振器の温度を制御してミラーの位置を安定させ、その変動を抑えられるようにした。これにより、測定の積算効率を上げることに成功した。また、装置の外側から微量に侵入する水分が、残留水分として測定に影響を与えることを発見し、残留水分への対策を行った。最終的に、検出感度6.3 pptを達成し、本研究の目標でもあった検出感度10 ppt以下を達成することができた。また、測定で得られた吸収スペクトルを詳細に解析することで、フィッティング関数の検証、及び水の吸収断面積の検証を行うことができた。得られた結果を論文にまとめ投稿し、掲載された。国際学会や国内学会での発表を通じて成果を公表することができた。
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