研究課題/領域番号 |
17K14514
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村山 恵司 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70779595)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キラリティ伝播 / RNA検出 / 修飾核酸塩基 |
研究実績の概要 |
本研究では、天然には存在しないL体のDNA (L-DNA)を用いることで、天然のD-DNAやD-RNAと非特異な反応を起こさないL-DNA回路を構築することを目的とする。また、人工核酸SNAを媒介として、天然のD-RNA配列情報をL-DNAシグナル増幅回路に伝達させることで、細胞内RNAの高感度・高正確な検出を目指す。 今年度は、標的RNAに応答してL-DNAのInputシグナルを放出するSNAインターフェイスの構築を行った。SNAインターフェイスは、標的RNAに相補的なSNAと、短いL-DNAから成るSNA/L-DNA二重鎖であり、標的RNA存在下でのみSNA/RNA二重鎖形成によりL-DNAが解離する設計である。これはD-RNA配列情報をL-DNAシグナル増幅回路に伝達するための中枢部分となる。 具体的には癌関連miRNAである22merのmiR21を標的RNAとして設定し、これに相補的なSNA配列を合成した。このSNAと部分的に結合するL-DNA配列(Input)の最適化を行った。なお最適化に際して、L-DNAの代わりにエナンチオマーである安価なD-DNAを用いた。その結果、16merのD-DNA配列を用いることで、室温において、標的RNA非存在下でDNAのInputシグナルを抑制、標的RNA添加によるInputシグナルの放出を達成した。しかし、同じ設計でD-DNAからL-DNAに変更した結果、反応速度が大幅に低下することが明らかとなった。L-DNAの左巻きがSNA部分に伝播し、右巻きであるRNAとの結合能が変化したと考えられる。そこで、反応速度向上と細胞内での応用を見据え、37℃で反応を行えるよう設計を見直し、修飾核酸塩基ジアミノプリンを併用した。その結果、高塩濃度条件が必要となるものの、37℃でL-DNAのシグナル放出を高効率に制御することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、SNAインターフェイスを構築する目標を達成できた。D-DNAとL-DNAで反応挙動が変化することは想定外であったが、非常に重要な知見となった。現状、高塩濃度条件が必要であるため、これを解決して次の段階に進む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、SNAインターフェイスの設計の最終調整を行う。生理塩濃度条件で反応を行うためには、SNAとL-DNAの結合力を高める必要があるため、修飾核酸塩基、ポリカチオンの導入などを検討する。 次に、Input L-DNA一分子に対し蛍光色素複数分子分の蛍光シグナルを与えるL-DNA増幅回路を構築する。シグナルを増幅させる方法としてはHCR回路を用いる。HCRは2種類のヘアピンDNAによる反応であり、単一のInput DNAに対し2種類のヘアピンDNAが連続的に開き、長い二重鎖を形成していく。このヘアピンDNAの二重鎖部分に蛍光色素と消光剤を向かい合わせに導入しておくことで、Inputが無い時にはヘアピンが閉じ蛍光色素の消光が起こるが、Inputの添加によりヘアピンの連続解離が誘発され、複数の蛍光シグナルが得られる。Input L-DNAの添加によって、Inputの100倍以上の蛍光分子数に相当する蛍光発光を得ることを目指し、配列設計・条件検討を行う。また、迅速かつ正確に機能する配列を探索する。 上記の通り最適化したSNAインターフェイス及びL-DNA-HCR回路を系中に共存させ、vitroでの標的RNAの検出を蛍光測定により行う。次に、培養細胞を用いて、FISH及び生細胞内イメージングにてmiR21の検出を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に対し、試薬購入費が少なく抑えられたため、次年度使用額が生じた。翌年度は試薬等の消費量が増大することが予想されるため、翌年度分の助成金と合わせて物品費として使用する。
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