本申請研究は、神経変成疾患の原因となる過剰伸長したRNAリピートを配列選択的に加水分解する低分子の開発とその応用展開を目的とした。過剰伸長RNAリピートは、核内に滞留しMBNL1などのスプライシング制御因子群とフォーカスと呼ばれる複合体を形成し、スプライシング制御因子の機能喪失を引き起こすことが分かっている。過剰伸長したリピートRNAが形成するヘアピン構造には多数のミスマッチ構造が生じることから、ミスマッチ結合分子に結合して近傍のリン酸エステル加水分解を誘導する低分子が、リピートRNA選択的な加水分解を促進する可能性があると考えた。これまでに、核酸中のGGミスマッチを認識する分子NCDに、加水分解を誘導すると考えられるチオール基やイミダゾール基などのさまざまな官能基で修飾した各種誘導体を合成し、それらの誘導体のミスマッチRNAの加水分解に与える影響をHPLCとMALDI-TOF-MASSをもちいて解析した。結果、RNA二重鎖中のC-Cミスマッチ部位でリン酸ジエステルの切断が起きやすいことを確認した。また、NCDをチオール基で修飾した化合物NCD-SH・NCD-CCは、標的リピート配列をテンプレートにダイマー化反応が効率よく進行し、標的と強固な結合を形成することを見出した。また、NCDにイミダゾール基を導入した誘導体NCD-IMIはよく金属錯体を形成し、DNA上に効率よく金属錯体を配置できることを見出した。本申請研究で合成したNCD-SHはOrg. Lett.(2017)に、NCD-CCはChem. Commun.(2018)に、NCD-IMIはChem. Commun.(2020)にそれぞれ報告した。
|