研究実績の概要 |
慢性腎臓病 (CKD) は、慢性的に腎臓の機能が低下する病態の総称である。近年、尿毒素であるインドキシル硫酸 (IS) が、活性酸素種の産生により腎傷害を引き起こし、CKDを進行させることが報告された。ISはタンパク質由来のインドールが吸収・代謝を受けることで生じるため、インドールの消化管吸収阻害はCKDの進行抑制につながる。 インドール吸着NPsの開発に向け、インドールの高い疎水性と香族性に着目し、ナノ粒子の構成成分には、疎水性モノマーとしてN-tert-butyl acrylamide、N-phenyl acrylamide、そして2,3,4,5,6-pentafluorophenyl acrylamideの3種類を用いて検討を行った。NPsは各疎水性モノマーに、N-isopropyl acrylamide(NIPAm)と、架橋剤を加え、ランダムラジカル共重合法により合成した。そして、合成したNPs とインドール インキュベートした後に、NPsに吸着されたインドールの量を算出することによりNPsのスクリーニングを行った。その結果、NPsとインドールとの相互作用は、NPsに組み込む疎水性モノマーの構造と配合比によって大きく変化した。次に、NPsの吸着選択性を、インドール類似低分子化合物であるインドール酢酸、トリプタミン、トリプトファンおよびビタミンB12のNPsへの吸着量を測定することで評価した。すると、NPsのインドール類似化合物吸着量は、インドール吸着量と比較して有意に低いことが明らかになり、NPsはインドールを特異的に吸着することが示された。さらに、in vitroでのNPsのインドール消化管吸収抑制効果を、小腸上皮様細胞株Caco-2細胞を用いて検討したところ、NPsはインドールのCaco-2細胞単層膜のapical側からbasal側への透過量を有意に減少させた。
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