研究課題/領域番号 |
17K14521
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北隅 優希 京都大学, 農学研究科, 助教 (00579302)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気化学 / バイオエレクトロカタリシス / ギ酸脱水素酵素 / バイオ燃料電池 / 二酸化炭素資源化 |
研究実績の概要 |
酵素反応の持つ高い触媒活性と基質特異性を付与した電極反応はバイオエレクトロカタリシス反応と呼ばれる。本研究では、ギ酸と二酸化炭素の相互変換反応を触媒する酸化還元酵素である、タングステン含有ギ酸脱水素酵素(FoDH)の電気化学的応用を推進し、FoDHを利用した二酸化炭素還元電極およびギ酸酸化電極の作成及びその高効率化の追求を行った。電極作成に際して二つの方法論について検討を行った。一つは、FoDHと電極間で直接電子の授受が可能となる反応様式(直接電子移動)であり、もう一つをFoDHと電極の両者とも酸化還元反応が可能である電子移動の媒介物質(メディエータ)を利用した反応様式(メディエータ型電子移動)である。 金ナノ粒子を多孔質炭素材料表面に分散させ、その表面に、4-メルカプトピリジンを吸着させた電極を作成したところ、FoDHと電極間での直接電子移動反応が観察された。この電極は二酸化炭素のギ酸への還元とギ酸の二酸化炭素への酸化を触媒するのみならず、FoDHの第2基質であるNAD+、NADHの相互変換反応を可逆に触媒することが見出された。しかしながら、現段階では十分な反応速度を達成できておらず(ギ酸酸化電流として2 mA cm-2)、メディエータ型電子移動反応についても検討を行った。電極から溶出せずFoDHを電極上に固定化するバインダーとしても作用する、ビオロゲン構造を側鎖に持つポリマーをメディエータとして使用したところ、より大きな反応速度(ギ酸酸化電流として30mA cm-2)を達成した。 また、酸素還元反応を触媒する電極と組み合わせることで、開回路電圧1.2 V、最大出力12 mW cm-2のギ酸を燃料としたバイオ燃料電池を構築した。この出力は報告時点ではバイオ燃料電池の出力として世界最大である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・過電圧のない高電流密度での二酸化炭素バイオ電解法の創成 FoDHの直接電子移動の実現により、当初予定していたメディーエータ型酵素電極反応に比べてより過電圧の小さい二酸化炭素バイオ電解が実現された。同時にギ酸と二酸化炭素の可逆変換が可能となった。しかしながら、電流密度を指標として考えると、高電流密度でのバイオ電解は、現状の直接電子移動型では困難である。電流密度の向上のためにはメディエータ型の酵素電極反応を追求する必要があると考えられる。
・高効率で電極反応と気液反応を共役させる電極の設計 直接電子移動型反応の実現により、メディエータと酵素が流通した条件と比べてより高効率なガス拡散型電極の構築が可能になった。直接電子移動型の電極反応を利用して高電流密度を実現するための課題として、電極の表面積の向上が挙げられる。これはメディエータ型酵素電極反応の最適化と異なる方法論の確立が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
直接電子移動型酵素電極反応の実現により、極めて効率の良い系の構築が可能になった。しかしながら、電極の微細構造に基づいた電極設計を進めているが劇的な反応速度の増加は困難であると考えられる。そこで、より反応速度を向上させるために、メディエータの最適化を追求する。 また、ガス状基質を用いた酵素電極反応における高効率化において直接電子移動型の酵素電極反応とメディエータ型酵素電極反応のいずれが適しているのか、一般的な解析法は確立していない。そこで、反応効率、電極設計、電極製造における全体的なバランス構築に関しての知見を深める。 また、本研究は物質変換を意図しているため、より反応効率を向上させるためにガス拡散電極の流通系への適応を検討する。
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