研究課題
研究期間を通して、触媒的炭素-炭素結合形成反応をppm以下の触媒量で実現するシステムの構築を目的に研究を実施した。その結果、反応基質に対してppm量以下のパラジウムNNC-ピンサー型錯体が、ハロゲン化アリールと活性化アルケンとのカップリング反応である溝呂木ーヘック反応や、臭化アリールと有機ケイ素化合物とのカップリング反応である檜山反応を効果的に触媒し、標的化合物を高収率で与えることを見出した。昨年度は溝呂木ーヘック反応の検討に注力し、ppm量以下のパラジウムNNC-ピンサー型錯体が本反応を効果的に触媒することを見出した。本反応システムを用いた場合、触媒回転数は最大で8億7千万回に達した。本年度は、有機ケイ素化合物と有機ハロゲン化物とのクロスカップリング反応である、檜山反応の高効率化を目指し検討した。その結果、アリールトリメトキシシランと臭化アリールとの反応を5 mol ppmのパラジウムNNC-ピンサー型錯体と3等量のフッ化カリウム存在下、プロピレングリコール中100度にて実施したところ、効率的に進行し、対応するビアリール生成物が良好な収率で得られた。本反応システムは高い官能基許容性を示し、一般に困難とされるヘテロ芳香環を基質として用いた場合も、ppmオーダーの触媒量で反応が進行した。本システムを用い、10グラムスケールでニキビ治療薬として用いられるアダパレンの合成を達成した。本反応システムにおいて、エチレングリコールやプロピレングリコールといった、ジオールを用いた場合、その他の溶媒を用いた場合と比較して顕著な反応加速効果を示した。そこで、その詳細を明らかとするために、実験・理論の両面から検討したところ、アリールトリメトキシシランとジオールから系中で発生する5配位ケイ素化合物の生成が、本反応が効果的に進行するために重要であることが明らかとなった。
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