光触媒による水分解反応は、太陽の光エネルギーから水素エネルギーを獲得する手段として研究されている。2種類の光触媒反応を組み合わせるZスキーム型の水分解法は、適応可能な材料の範囲が広いことから精力的な研究が進められている。しかしながら現状の性能は不十分であり、大幅な性能向上および手法の更なる工夫が求められている。本事業では、従来のZスキーム型水分解法では活用されていない、レドックスリレー過程でエネルギーを獲得する新規な太陽エネルギー変換貯蔵システムの開発および実証を目指した。2018年度までに、本提案手法に利用可能な2種類の光触媒反応、およびレドックスフロー電池の原理を利用した放電反応をそれぞれ開発し、実際に組み合わせて評価した。その結果、系内に投入したレドックスの物質量を大きく超えても定常的に水素と酸素が生成し、かつレドックスリレー過程で電力エネルギーを貯蔵可能な新規な水分解法の実証に成功した。反応初期の太陽光エネルギー変換効率は0.05%程度と見積もられた。 2019年度は、さらに高い性能を実現するために、触媒の表面処理を実施した。様々な金属元素を用いた表面処理を実施し、系統的に評価したが、残念ながら劇的な性能向上を実現できる触媒の開発には至らなかった。 PEM型セルを用いることで貯蔵される電力エネルギーの放電反応速度をどの程度改善できるか評価した。その結果、昨年度使用した2室セルと比較し1桁近く電流値を向上させることに成功した。アノードとカソードの電極間距離の短縮が、PEMセルでの性能向上の主要因と考えられた。
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