研究課題/領域番号 |
17K14530
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
井本 裕顕 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (40744264)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機無機複合材料 / 構造有機化学 / 有機元素化学 |
研究実績の概要 |
かご型シルセスキオキサン(POSS)の内部には対称性の高いLUMOが存在することや、POSSがπ共役系分子に対して電子アクセプターとして作用することが知られている。しかし、その詳細については実験研究が不足しているために明らかになっていないのが現状である。本研究では、POSSを直接アリール化する反応を開発し、それを利用して様々なアリール化POSSを合成・分析することでPOSSが有する電子材料としての可能性を探求することを目的としている。これまでアリール化POSSを合成するには、前駆体としてアリール化したシランカップリング剤が必要であったが、反応性の高いシランカップリング剤を合成・単離することは容易ではなく、幅広いスクリーニングや系統的な調査の妨げになってきた。本年度は、遷移金属触媒反応によってハロゲン化アリールからPOSSを直接アリール化する手法を開発した。さらに、合成したアリール化POSSの光学測定と理論化学計算を組み合わせることによって、POSSとπ共役系分子がどのように相互作用するのかを系統的に調査した。その結果、POSSの内部に存在する球状のLUMOとベンゼン誘導体とは相互作用しておらず、ケイ素が置換したことによる吸収極大の長波長シフトを観測したことが分かった。また、POSSの材料化を目指して、POSSの対称構造を崩すことによって、自己組織化あるいはポリマー媒体中での分散安定性に与える影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度において、POSSの直接的アリール化反応を確立することができた。本手法を用いることで数多くのアリール化POSSを合成することができ、これらの系統的な調査によってPOSSとπ共役系分子がどのように相互作用するかを実験・理論の両面から明らかにすることができた。これらの成果は、当初計画に記載した内容が順調に進捗していることを示している。また、POSSの対称性を崩すことによって得られる自己組織化挙動やポリマー中への安定な分散挙動は、POSSを材料化する上で極めて重要な知見である。この成果は、当初計画には含まれていない新たな知見である。以上のことを踏まえて、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、POSSの直接的アリール化反応の基質適用範囲を拡大することで、ベンゼン誘導体に限らず、さらに多種のアリール基を導入して光学特性の調査を行う。その中で蓄積された知見をもとに、POSSの材料としての新たな可能性を見出す。また、POSSのアリール化反応のメカニズムは不明な点が多く、理論化学計算でサポートしながら機構解明を目指す。
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