研究課題/領域番号 |
17K14537
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
為末 真吾 宇都宮大学, 工学部, 助教 (10611767)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インターカレーション / ゲル材料 / ソフトマテリアル / 高分子 / 超分子 |
研究実績の概要 |
ヒドロゲルはゼリーやコンニャクのように高分子の網目に水を取り込んだ構造を持った柔らかく弾力を持った材料である。このヒドロゲルは水を大量に含んだ材料であることから高い生体適合性、環境負荷の少なさから生体内で人工筋肉や人工軟骨等への利用が期待されている。実際にヒドロゲルを人工軟骨などへ利用する際にはヒドロゲル自体の機械的強度、そしていかにヒドロゲルと生体組織、もしくはヒドロゲル同士を簡便かつ強固につなぎ合わせる(接着)手法の確立が必要である。 層状無機化合物の一種であるLayered Double Hydroxide(LDH)の層間には様々な陰イオン(アニオン)をインターカレーションにより交換し、取り込むことができる。この性質を利用してネットワーク中にアニオン性官能基を有するヒドロゲルを作製し接着した。その結果、ヒドロゲル中のアニオン性官能基がLDHに内包され、そこが架橋点となり、非常に強固にゲル同士を接着できた。さらにこの手法によって得られた接着部は酸やアルカリなどのpH、温度、ヘキサン、アルコール類、水といった種々の溶媒条件など様々な過酷な環境に対して安定性を示した。 そして過去に報告してきたカチオンゲルの層状無機化合物マイカを用いた接着と組み合わせることで単純なイオン結合で調製された接着部には見られない性質を発見することができた。 またアニオン性官能基の大きさや、アニオンと高分子主鎖の間のリンカーの剛直性などの構造がインターカレーションの効率に影響を与え、接着強度を大きく変化させることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インターカレーションを利用した高分子ネットワーク材料の研究の一部として、アニオンゲルの接着について報告することができた。さらに現在では、異なる手法を用いたヒドロゲルの接着システムの開発を進めており順調に進展していると考えている。また、それ以外にも層状無機化合物へのインターカレーションを利用したネットワーク材料の興味深い性質についても見つかってきており現在検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに単純な層状無機化合物へのインターカレーションを用いたネットワーク材料の開発を行ってきたため、今後は特異な性質を有する層状無機化合物の検討と利用を進めていきたいと考えている。そのため、国内外の無機化合物の研究者との共同研究を視野に本研究をより効率的に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度、カラムの購入費や試薬購入費、真空ポンプの購入や学会への参加費などへ予算を多く使用する見込みがあるため次年度使用額が生じた。
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