本研究では昆虫の外骨格を形成する高弾性タンパク質である「レジリン」をモデルとした人工ポリペプチドの創製に取り組んだ。レジリンの代表的な繰り返しアミノ酸配列として知られる、キイロショウジョウバエ由来レジリンのExon Iドメイン(GGRPSDSYGAPGGGN)とExon IIIドメイン(GYSGGRPGGQDLG)、ガンビエハマダラカ由来レジリンの配列(AQTPSSQYGAP)の3種類に焦点を当て、遺伝子工学的手法を利用して大腸菌発現系により、これらが8~32回繰り返されるポリペプチド、およびこれらが連結したブロック共重合体状のハイブリッドポリペプチド(計42種類)を得ることに成功した。また、これらのレジリン模倣ポリペプチドについて、配列の種類、繰り返しの回数(分子鎖長)により生産性に大きな差があることを確認するとともに、一部の配列では菌体内に生成した目的ポリペプチドの大部分が可溶性ポリペプチドとして得られることを突き止めた。さらにHis-Tagタンパク質としてNiアフィニティーカラムで回収できることを確認し、その分離精製条件を確立した。 最終年度では、「生産性」と「構造比較」の観点から前年度に選定した上記の繰り返し配列が32回繰り返される3種類のポリペプチドおよびハイブリッドポリペプチド(分子量4万前後)について、これらの大量取得を目指して培養実験を繰り返し行い、それぞれ前年度から2倍以上の収量(最大55.5 mg/L)に引き上げた。また、得られたポリペプチドの水溶液からキャストフィルムを作成するとともに、ペプチド鎖中のチロシン残基の酸化カップリング実験にも着手した。今後はカップリング前後の物性変化の評価を進める予定である。
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