さまざまな化学組成で作製される塊状(モノリス型)多孔体は古くから利用されてきた材料(構造体)である。粉体や薄膜とは異なり厚みをもつ三次元構造であることから、空間・表面の両方を活かした特徴的物性をもたせることができる。本研究に用いたナノファイバーやその複合材料を骨格にもつ多孔体は、骨格径や嵩密度に対して比較的高い強度や破壊耐性をもつ特徴がある。クラックが入りにくい特性を生かし、圧縮変形によって嵩密度や光学特性、熱伝導率などの物性を制御する目的で研究を行った。 アルミニウム酸化水酸化物・ベーマイト組成のナノファイバーの分散液を適切な条件下で反応を行うことで、単体で5 mg cm^-3以下の透明な超低嵩密度エアロゲルを作製することができる。この材料はクラックを生じることなく圧縮変形可能であるが吸湿により劣化することが問題であった。今回、ナノファイバーをポリシルセスキオキサンで薄く被覆することで、ある程度の可視光透過性をもちつつ疎水的なもつ柔軟マクロ多孔体の作製に成功した。また、この材料を圧縮変形することで熱伝導率を制御できることがわかった。シルセスキオキサンの代わりにレゾルシノール・ホルムアルデヒド樹脂を用いたベーマイトナノファイバー複合マクロ多孔体の作製にも取り組んだ。得られたモノリス体は、直径数十ナノメートルの骨格内にナノファイバーが分散した、これまでほとんど報告されたことがない微細構造をもつことがわかった。構造形成の仕組みはシルセスキオキサン系の場合とは異なっていたと考えられる。ヤング率が高く圧縮変形による加工には向かないが、軽量な耐炎・遮熱性材料などへの応用や、新しい作製手法の発展が期待できる。
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