研究課題/領域番号 |
17K14542
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
朝倉 裕介 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00762006)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 窒化物・酸窒化物 / 光触媒 / 形態制御 / 透明膜 / 露出結晶面制御 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、1) 層状ペロブスカイト酸化物のトポタクティック窒化反応によるペロブスカイト型酸窒化物の合成および、2) ZnGa2O4ナノ粒子の窒化によるGaN:ZnOナノ構造体の合成に注力した。 1) 層状ペロブスカイト(RbLaTa2O7)は、ペロブスカイト型酸窒化物(LaTaON2)の基本骨格を有しており、層間のRbイオンとLaイオンを交換しながら窒化反応を行うことができれば、トポタクティックな窒化反応を引き起こすことができると予想される。そこで、塩化ランタンとRbLaTa2O7を物理混合させ、窒化反応を行った。従来の窒化反応よりも短時間でLaTaON2が得られること、および出発物質であるRbLaTa2O7の板状形体が残存しながらLaTaON2が得られることが分かった。また、電子線回折から出発物質の結晶方位が残存していることが示唆された。従来の手法だとLaTaON2の結晶形態・結晶面制御をすることは難しく、新規トポタクティック反応によりその可能性を見出した。
2) 粒径20-30 nmほどのZnGa2O4ナノ粒子が比較的低温の水熱反応で直接得られることを見出し、このナノ粒子を窒化することによりGaN:ZnOナノ粒子を得ることを検討した。可視光を吸収可能な窒化後ウルツ鉱型の酸窒化物が得られた。得られた物質は、出発物質の粒径より大きな粒子となったものの、粒径50 nm程度と比較的小さな粒子として得られた。この物質の光触媒NO分解反応活性は、バルクのGaN:ZnOよりも高かった。また、ZnGa2O4がナノ粒子であることに着目し、ドクターブレード法によりってZnGa2O4透明膜を得て、さらに窒化することによって、GaN:ZnOの透明膜を作製することに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
層状ペロブスカイトを出発物質として用い、層間のイオンを交換しながら窒化することにより、形態および結晶面が制御された酸窒化物を得ることに成功しており、酸化物の形態制御にまだ課題は残っているものの、目標を順調に達成しているといえる。また、ZnGa2O4ナノ粒子を利用することで、GaN:ZnOナノ構造体および透明膜を得ることに成功した。酸化物ナノ粒子を酸窒化物の前駆体とすることのメリットを見出すことができており、波及効果のある成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、酸化物からの酸窒化物合成により、形態制御および結晶面制御を達成しており、一定の成果を残すことができた。しかし、まだ酸化物自身の形態制御には課題が残っている。そのため、今後は層状ペロブスカイトの形態制御に注力し、より精密な酸窒化物合成を目指す。得られた物質の機能評価により、形態・結晶面の機能への影響を理解する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、所属研究所から研究費の支援があり、科研費での支出を抑えることができた。 研究が一定の進展をしているが、酸化物の形態制御にはまだ課題が残っている。当初の計画では想定していなかったが、より高温で水熱・ソルボサーマル反応可能な反応容器購入に支出する。
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