研究実績の概要 |
本研究の目的は、電気二重層キャパシタにおける電極の表面電子状態とキャパシタ容量の関係を明らかにすることである。本年度は、表面電子状態を制御した電極試料として分子内包カーボンナノチューブの作製と基礎的なキャラクタリゼーションを実施した。 本実験系では、カーボンナノチューブと内包分子の間に電荷移動が発生する。内包分子の種類を変化させることで、カーボンナノチューブ表面の電子状態のコントロールを実現する。本手法では、電気二重層形成(電解質イオンの吸着)の場となるナノチューブ外表面の構造・組成は一切変化しないので、電子状態の効果だけを純粋に抽出して議論することが可能となる。 本年度は平均直径の異なる2種類の単層カーボンナノチューブ(直径1.5nmと2.5nm)に対して、真空昇華法によるフラーレン(C60)、フッ化フラーレン(C60Fx)、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、9,10-アントラキノン(AQ)、フェロセン(FeCp2)分子の内包を実施した。 得られた試料について、電子顕微鏡による直接観察、粉末X線回折、蛍光X線分析、X線光電子分光分析、熱重量分析を実施し、ねらい通り内包されていることを確認した。さらに単層カーボンナノチューブ‐内包分子間の電荷移動の方向・程度を評価するため、ラマン分光測定とゼーベック係数測定を実施した。C60Fxを内包した単層カーボンナノチューブで、特に顕著な電荷移動反応が起こっていることが明らかとなった。
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